【山崎あおいの日日是好日】第6話：パリピYouTuberに慰められる、地味シンガーソングライターの深夜

シンガーソングライター、作詞・作曲家として活躍する山崎あおいさんが、北海道から上京してからの暮らしをエッセイとして綴る好評連載。第6話からは深夜編。今回はハマっているYouTuberについて書いていただきました。

0時を回ってからが、1日で1番たのしいと思う

なぜ世間というものは、朝型人間ばかりを賞賛するのだろう。

私も一時期、朝型信仰に傾倒し、毎朝5時に起きて仕事をしていた時期があったが、全ての記憶がぼんやりとしていて、定かではない。ただ友人によると「あの時期のあなた、『最近神様とお話ししてるの』とか突然言い出してマジで怖かった」とのことなので、多分、相当体に合わなかったのだと思う。1年くらいでその生活も終わった（1年続けたのは褒めたい。）

今はすっかり諦めて、完全に夜型人間だ。

深夜0時。満足いくまで仕事をしたら、パジャマに着替えて、歯磨きを済ませ、保湿パックをする。保湿パックはしない日もある。…いや、ほとんどしていない。コラムなので見栄を張ってしまった。とにもかくにも、そうして就寝準備を整えて、ベッドに入ってからが、1日で1番たのしい時間だ。

スマホを開いて、まずはYouTube。チャンネル登録をしているお気に入りのYouTuberが何人もいる。そしてそのうちの何人かは、ほとんど毎日新しい動画を投稿するので、チェックするのが日課なのだ。

最近のお気に入りは「EvisJap」という、イケメン男性３人組。路上で、相席ラウンジで、SNSで。あらゆる場所で女の子をナンパし、「お持ち帰り」できるか挑戦し、その男女の攻防をカメラに収めるという…正直、倫理観のカケラも無いようなチャンネルだ。

いま私がここでファンを公言しても、何一つとしてメリットことがない。だけれど、部屋に一人でいながら、行ったことのない六本木のクラブのカオスを覗き見できる動画たちが、結構クセになってしまうのだ。

百戦錬磨のトーク術と整った顔で、巧みに女の子の心をノックする。番組自体の下衆な雰囲気は、昔のロンドンハーツに似ている。田村淳さんが女の子に指示を出して、若手芸人の恋心を弄ぶ、あのコーナー。イケメンYouTuberに口説かれる女の子も大抵、まんざらではない感じだ。

（女の子って、みんなこんな風にホイホイついて行っちゃうわけ？チャラいなあ。知らない人にはついて行っちゃダメって、子どもの頃散々言われたろうに。いつから解禁したの、それ。）

さすがにこういうこと、友達同士で話したりはしなくなったけれど、それでも心の中ではまだ少し思ってしまう。一体私は、モザイクのかけられた知らないOLに、なんの純情マウントを取っているのだろうか。

私も何年か前までは、いわゆる「夜遊び」に惹かれる時期、みたいなのが定期的にあった。パリピ無理ー！リア充（って最近聞かなくなったね）無理ー！と大げさに話す一方で、バーを開拓するぞ！と意気込んで友達と集合しては勇気が出ず諦め、クラブに行くぞ！と一人で入り口まで行っては入場方法を聞く勇気が出ず諦め、を繰り返していた。見てみたい、だけど怖い、に沢山の時間を費やした。

しかし、無理なものは無理なのだ。お酒の勢いを借りても、なぜか変装してみても、扉が重すぎる。結局、そこの線を踏み越える前に、「踏み越えたって実際楽しめないだろうし、いいや」と冷静に判断できるくらい大人になってしまった。

自分とは交わらない場所にある、と気づいてしまった世界。自分の時間を使ってまで見なくていいや、と諦めた世界。だけど本当はちょっと憧れてた世界を、YouTuberを通して見てみて気がつく。

やたらそういう人たちを嫌っていたころ、本当は羨ましかったんだろうな。かっこいい男の子相手にちゃんと対等に「イェーイ！」が言える、女の子たちのキラキラみたいなものが。

ああ、そういうことかー。なんて、自分で自分を考察してしまうのも、きっと深夜だから。特に誰かに話すわけでもなく、朝起きたら綺麗さっぱり忘れて、また、パリピこわーい、とか言いだすのです。

ところで、深夜のおやつに、と思いマシュマロサンドをレンジで2分チンしたらこの有様。推奨加熱時間は3秒だったみたいです。見当違いもいいところ。

著者：山崎あおい
札幌出身、26歳のシンガーソングライター。2012 年8 月メジャーデビュー。透明感のあるピュアな歌声と、リアリティをもったセンチメンタルな歌詞が同世代をはじめ、幅広い層の男女に支持を受けている。また、多数のアイドルグループへの楽曲提供を中心に作詞家、作曲家としても活躍中。
Twitter：@aoi_punclo
公式ホームページ：yamazakiaoi.jp

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