- case
- 2020/06/11
ビンテージマンションに憧れて
最近、密かなマイブームがある。夜な夜な「ビンテージマンション」について調べることだ。
自粛期間中、近所のコンビニでなんとなく惹かれ、インテリア雑誌を手にとった。ビンテージマンション特集。おうち時間の充実が世間的なトレンドな今、古いマンションを愛情を持って手入れし、こだわりの家具たちに囲まれて暮らす人々はとても素敵に見えた。
「私もビンテージマンションに住む素敵なおばさんになりたい!」
すぐに影響されて熱を上げてしまうところが、私の長所であり短所だ。
素敵なおばさんになりたい
さて、今の私は田舎の賃貸1K、とっても質素な暮らしをしている。上京してきた当初、アルバイトで食いつなぐ学生だった頃と、あまり変わらない生活水準だ。
いつかどこかで「家賃は年収の2割5分程度に抑えましょう!」という文言を見た気がするけれど、ぶっちゃけた話、私の家賃は年収の1割にも満たない。そんな住まいに無頓着な26才の私から「ビンテージマンションに住む素敵なおばさん」になる道は、果たして存在しているのだろうか。
ひとまず、ネットで表層的に調べられる限りでの、ビンテージマンションの値段を調べた。
都心に位置するブランド価値の高い有名マンション(原宿駅前のコープ・オリンピアなど)はさすがに手が届く値段ではない(なお、この手が届くor届かないの基準は、「なんとなく」だ)。
しかし築年数が古いこともあってか、モノや面積によっては、現実的な値段の部屋もある。そしてそのうちの一軒、有名な建築家が手掛けたビンテージマンションが、なんと近くにあるという。これは見にいく他ない。
近所のビンテージマンションを見学
翌日の昼、早速向かう。急勾配の坂を登った先に、そのマンションはあった。あまりにも急勾配だったので、毎日ギターを背負ってこの坂を登って帰宅することを考えるとだいぶ「住みたい欲」は鎮まってしまっていたが、あまりにもお洒落な外観にそれはすぐに再燃した。いつか絶対にここに住みたい。
とは言え、まだ中がどんな風になっているのか、全く知らない状態だ。今は内見などできないし、ましてや購入することもできないけれど、せめて間取り図や面積だけでも知ることができないだろうか。
販売を仲介する不動産屋さんのホームページに行くと、間取り図を見るには会員登録が必要とのことだった。面倒だけれど、仕方がない。電話番号と名前を登録した。
間取り図が見たかっただけなのに
すぐに電話が鳴った。知らない番号。
「もしもし、こちら〇〇不動産ですが」
登録したのはついさっきで、肝心の間取り図もまだ見ていないと言うのに、恐ろしいスピードだ。
「マンションのご購入を検討ですか?あいにくお求めの物件は人気で……予算を教えてくだされば、他の物件もご提案いたしますよ!」
「いえ……すぐに購入は考えていなくて……間取り図が見たかっただけで……」
不動産の購入、と言う身の程知らずなやり取りにビビりまくりな私をよそに、電話口の向こうの男性はテンション高めに話を続けた。会社の近くに、同じ建築家が設計したビンテージマンションがあること。住宅ローンは購入する気がなくても事前審査ができること、など。
間取り図が見たかっただけだったのに、人を巻き込んで大事にしてしまったかな。申し訳なくて、しゅんとした。しばらくは個人的な趣味として、最初に心を打った雑誌を何度も繰り返し眺めるだけにしよう。
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