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- 2020/01/31
シンガーソングライター、作詞・作曲家として活躍する山崎あおいさんが、北海道から上京してからの暮らしをエッセイとして綴る好評連載。第7話は雪が降ったことにより思い出した、冬のとても寒い日のエピソードを書いていただきました。
東京は雪模様
今週、真夜中の東京で雪が降った。
私はその日、作詞や作曲の作業、そしてこの原稿書きなど家から出なくてもいい仕事ばかりだったなので、特に困りはしなかったのだけれど。それにしても部屋が寒くて、寒すぎて、「北海道に帰りたい」なんて思ってしまった。一見矛盾しているようだけれど、北海道の家はしっかり防寒対策されているので、とても暖かいのだ。
2014年、バレンタインデー
パソコン越しに窓の外を見ながら曲を作っていて、思い出したことがある。
2014年のバレンタインデーだったと思う。深夜23時ごろ。名古屋でのラジオ収録を終え、天気が怪しいからと早めの帰路についたはずなのに、私はまだ真っ暗な電車の中にいた。大雪の影響で横浜線が停電し、立ち往生してしまったのだ。
2月の東京は冷える。北海道出身の私が言うんだから、間違いなく冷えている。暖房がつかなくなった電車内は凍えるほど寒く、乗客は皆心細くなっているようだった。知らないおじさんとも世間話をしたくなってしまうほど。
「帰れますかね」
「町田まで行ってくれればいいんだけどね」
当時の私の家は、町田駅からタクシーで30分ほどのところ。何十分かして電車は動いてくれたものの、町田まではたどり着けず、名前の知らない駅で乗客全員が降ろされてしまった。駅前に一軒だけあったコンビニで暖かいミルクティーを買うものの、図々しくそこに居座り続けられる根性はなく、また改札前で凍えながら朝を待つ。携帯の充電もほとんどなく、電話一本で迎えに来てくれるような家族も友人も恋人もいない。途方に暮れていた。
救世主、サラリーマン
「すみません、僕タクシー捕まえてくるんで、相乗りしませんか」
私に声をかけてきたのは、仕事帰り風のお兄さんだった。傍には個性的な格好をしたお姉さんと、私と同い年くらいの男の子。この3人も全員初対面同士で、「とにかく暖かい場所へ避難したい」という意志だけを共有する者たちらしい。
お兄さんは屋根のある安全地帯に私たちを残し、吹雪のなかに果敢に飛び込んで行った。映画だったらこれ、絶対二度と帰ってこないやつだ。安全地帯を追われた私たちが必死に逃げている途中に、無残な姿で発見してしまうやつだ、と思った。しかしお兄さんは、10分くらいして、タクシーを連れて戻ってきた。
あたたかい車内に入れた瞬間、すごくホッとしたのを覚えている。その日余らせたバレンタインチョコを配り、みんなで食べた。窓の外は大雪。先ほどまで死んでしまうんじゃないかと思うくらい心細かったのに、車が町田に到着するころには「大停電の夜みたいで楽しかったなあ」なんて思っていた。
あれが本当の一期一会ってやつだよなあ。あの時の3人、元気にしてるかなあ。私もこの6年でだいぶ大人になったよなあ。と、ちょっとだけ感傷的になってしまった。夜中に一人で感傷的になるのは危険なので、そういう時はさっさと寝てしまうのが正解ですね。
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