【山崎あおいの日日是好日】第7話：「明日急にツイッターが大炎上し、二度と音楽の仕事ができなくなったらどう這い上がるか」という深夜の妄想

シンガーソングライター、作詞・作曲家として活躍する山崎あおいさんが、北海道から上京してからの暮らしをエッセイとして綴る好評連載。第7話は前回に引き続き深夜編。今回は深夜の妄想について書いていただきました。

母は妄想ガール

この間、久しぶりに会った母が「私、妄想ガールなの」と告白してきた。

50才を超えた実の母から出る“ガール宣言”はなかなか強烈なパンチだったが、どうやら、最近めきめきと料理の腕を上げている父をシェフにして、実家を改装したカフェをはじめる妄想を日々楽しんでいるらしい。母を見ていると、自分とは全く似ていない、と思うことが多いのだが（友達がたくさんいて、家族以外には愛想がいい）、この「妄想ガール」ぶりに関していえば、私も完全に受け継いでしまっている気がする。

もしも アプリ開発者になったら

私もよく、根も葉もないことを考え出して止まらなくなることがある。イケメンとのデートプランや、次に引っ越すならこの街かな…♪みたいな楽しいものではなく、大体のテーマは「明日急にツイッターが大炎上し、二度と音楽の仕事ができなくなったらどう這い上がるか」。

ある夜の答えは「アプリ開発者」だった。このIoT時代である。まあIoTが何かはよく分かっていないけれど。天才プログラマーにはなれなくても、ちゃんと勉強すれば私だって、下請けの下請けの下請けの下請けくらいで働くエンジニアになれないこともないだろう。

思い立ったらとりあえず行動してみなくちゃ気が済まない性分（特に深夜はそう）。大学で買ったアプリ制作のテキストを読みながら、ひとまずアプリを作ってみた。

これが、そのアプリだ。

「何食べる？」「なんでもいい」はデートにおける最悪なコミュニケーションの一つとされているが、それを解決する、たった一つのアイデア（カッコイイ）。ボタンを押すと、ランダムでメニューを提案してくれる。提案に対し「何でもいいとは言ったけどそれじゃないんだよね」と感じれば、再度ボタンを押すだけだ。仕組みは、小学生でも作れるような簡単なルーレットアプリ。このアプリに一つ難点があるとすれば、食の好みが私仕様なので「牛丼」「寿司」「ラーメン」くらいしか提案してくれないことだ。

もしも社長だったら

ある夜の答えは「音楽制作会社の社長」だった。作曲家としてある程度のキャリアを積んだ人が30代半ばくらいで事務所から独立し、音楽制作会社や作家事務所を立ち上げるケースは多い。そんな人生への憧れはある。

ひとまず、会社のホームページを作ってみる。もちろん非公開で。WordPressで作成したページに、立派に会社概要（架空）や企業ポリシー（架空）なんて、それらしい目次を並べてみる。

会社概要…従業員１名…というか私は従業員として数えられるのか…？
会社所在地は…自宅…え、でもこの部屋って会社として登記して大丈夫なの…？
ポリシー………めっちゃがんばること。

実は数年前に一度、個人事務所を立ち上げる話が浮上したのだが、だらしない性格のせいで、いつかうっかり脱税とかして捕まりそうなので諦めたことがある。ホームページを作ってみるだけで、それ以外にもたくさん問題が見つかった。よく調べないで適当に登記して、いろんな罪で起訴されそう。ポリシーが個人的すぎる罪とかで。

深夜テンションは恐ろしい

妄想は、妄想だけに留めておきたい。けれども深夜、ちょっとテンションが上がっている状態だと、そのまま手が動いてしまうのだ。それが良い方向に働けば良いけど、いつか大きな事故を起こしそうなので、気をつけないといけないなとは思っている。

まあ、最近は大学の講師に憧れているので、架空のシラバスを作る夜が近い気もしていますけれども。皆さんも深夜の妄想はほどほどに。

著者：山崎あおい
札幌出身、26歳のシンガーソングライター。2012 年8 月メジャーデビュー。透明感のあるピュアな歌声と、リアリティをもったセンチメンタルな歌詞が同世代をはじめ、幅広い層の男女に支持を受けている。また、多数のアイドルグループへの楽曲提供を中心に作詞家、作曲家としても活躍中。
Twitter：@aoi_punclo
公式ホームページ：yamazakiaoi.jp

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