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- 2018/11/17
目次
わたしの自立キャンペーン優秀賞の柊 クイチさん記事をご紹介
はてなブログとWoman.CHINTAIが共同で9月27日(木)から10月10日(水)に実施していた、特別お題キャンペーン「#わたしの自立」。
たくさんの記事が集まりましたが、その中で見事優秀賞を受賞された、柊 クイチ(id:Kuichi)さんのエントリー『ライスワークは好きですか?という問いに寄せて』をご紹介させていただきます。
ライスワークは好きですか?という問いに寄せて
自立の定義を『自分で自分の生活費を賄うこと』とするなら、私の自立はかなり遅くて28歳の頃でした。
その少し前の私は新卒で入ったシステム開発会社をやめて、直後始めたフリーライター一本では食べていけない状態で数年経っていて、貯金もゼロ。
親の援助で何とか東京には居させてもらっていましたが、何十社採用に応募しても不採用や返信なしばかり。
アルバイトの面接に行っても落ちるし、縋るような気持ちで自己啓発本や引き寄せ本を死ぬほど読んだのもこの時期でした。
実家は決して裕福ではなく、援助も限界にきていて、これ以上迷惑をかけながら、社会に必要とされずに生きている価値はあるのか……と考える日々でした。
不採用の連絡は精神的に余裕があるときはいいのですが、崖っぷちにいるときだと本当に人の精神をえぐるものです。
しかしそれでも現金なことにお腹は減るもので……幸いにも安いスーパーが徒歩圏内にあったので、食事だけはバランスよく摂っている状態でした。
お金はなくても時間だけはあったので、一口コンロの極小キッチンで、細々と工夫しながら日々の食事を作ったり保存をしていたのです。
確か月の食費は外食を抜きにすると1万円程にどうにか収めていました。
そんな生活にどうにか区切りをつけ、自立するまでの話です。
編集者やフリーライターになることを諦めた日
私は、本が好きだったので編集者になりたかったのです。あるいは文章を書く人になりたかった。
けれど、出版社は何十社と不採用通知をもらうし、フリーライターとしては遂に芽が出ることはありませんでした。
振り返れば、出版社に入るにはまず学歴で足切り候補ですし、フリーライターで食べていくには他の人との差別化や営業が上手くなかったのです。
といってプログラミングに対する興味は既に失っていて、またやりたいとはとても思えなかった*1。
このままでは本当にどうしようもなくなるな、と、懐に痛い交通費を払いながらハローワークに通っていたある日。職業訓練というものがあり、要件を満たせば月10万円の給付金がもらえるということを知りました。
色々な職業訓練がある中で、Webクリエイターの職業訓練にわずかばかり興味を惹かれました。
10年近く前、HTMLは学校で基礎を習ったし、自分のサイトを作るために少しいじったことがあります。
カリキュラムを見ると、基礎から教えてもらって、サイトを自分で作れるようになると書いてありました。
これなら自分でも多少はできるようになるのかも知れない。
ネット上の情報を見るのは好きでしたし、かなり忘れているとはいえプログラミングをしていた経験もあるので、そこまで馴染みが薄いものではないかも知れない。
それから一番近い訓練開始日のWebクリエイターの講座を選んで、給付金の要件を満たしていることを確認した、27歳の夏。Web制作業界に一歩足を踏み入れることになりました。
やりたい仕事とできる仕事
Webクリエイターの職業訓練で一通りの基礎を勉強したあと、時間はかかりましたがどうにかWeb制作系の会社に拾ってもらい、紆余曲折はありつつも未だにWeb系の端っこにいます。
幸いにも、Web系の仕事は比較的相性が良かったようです。
編集者やフリーライターを目指していた頃ほどの崖っぷちには陥らずに済んでいます。
あそこでWebクリエイターの職業訓練に気づいたのは『できる仕事』に繋がる縁のようなものだったと感じていますが、『やりたい仕事』とイコールにはなりませんでした。
それを残念に思う気持ちがない訳ではありませんが、今までやってきたことは仕事の中で役に立っていることも多いので、無駄なことはひとつもなかったと思います。
ライスワークのおかげで自由度が上がった
Webの仕事はライスワークに近いものではあります。しかし今のところ飽きずに続いてはいますし、やりたい仕事は別でやってみることができる世の中になってきています。
あの頃の私は、やりたい仕事がしたいという気持ちが強すぎて追い詰められていました。
今となっては『やりたい仕事』は趣味の範囲でやってはいるし、ライスワークで安定的な収入があるので、失敗してもあまり浮き沈みがありません。
思い付きでグッズを作ってみたり……。
本の表紙をデザインしてみたり……。
文章を書いてみたり、絵を描いたり、ゲームしたり、素材を作ってみたり、好きな本を読んだり、英語の勉強を始めたり……没頭できる時間はあの頃よりずっと少ないですが、あの頃よりはなんというか自由です。
私の場合、ライスワークとして一本大きな生活の基盤を持っておいて、やりたいことは個人活動でやるのが今のところ合っているようです。
わずかながらそれでお金をいただくこともあり、自信とまではいきませんが少し嬉しい気持ちになったりもします。
座右の銘にしている言葉があります。
興味そそられることはなんでも深入りしてみること。
それを大切にしなさい。
再発見し、提供し、どんなことをしても、それがもう一度花咲くように努力することです。
Jacqueline du Pre
デュ・プレ
1945-1987
昔のエントリーにも書いたものですが、深入りしてみなさい、とは書いてあっても本業にしなさいとは書いていません。これを昔は、本業にしないといけない、と思い込んでいました。
まとめ
冒頭に書いた頃は本当にどん底に近くて*2、給付金をもらうようになってもはっきり言えば貧乏で先の見えない生活でした。
特に給付金をもらうようになると同時に実家の援助は打ち切りになったため、10万円という枠の中でひとり暮らしのための諸々の必要経費を支払うと、ほとんど余裕がありません。
お金はいつもカツカツで、数百円の出費にも思い悩むことが多かったです。
それでも、そういう生活だと工夫せざるを得ないので自炊での材料の回し方は上手になったし、お金のかからない生活の楽しみ方も覚えました。
なにより自分自身が最低限どのくらいの生活レベルなら問題ないのかを、体感で知ることができたのは大きいと思います。
あとは『やりたいことを仕事に』症候群から抜け出せたのはとても大きな転機でした。
ライスワークだからこそ適度な距離感で仕事ができる
仕事が好きか嫌いかと問われると、正直返答には困ります。
Webは面白くて興味のある題材である一方、面倒なことや嫌なこともあって、しかし特別好悪の感情には結びつかないという感じです。
だからこそ一歩引いて考え、効率的にしたり責任を果たそうというところがあります。
ライスワークだから手を抜く、という訳ではなく、仕事だから自分の能力の範囲でできることはきちんとやるし必要なら勉強もする、という感じ。
これがもしやりたい事だったら……私の性格からすると、燃え尽きるまで没頭して、ある日突然冷めてしまったのではないでしょうか。
好きなことだからこそ、理不尽が飲み込めなくなったり、こだわりが譲れないということになると思うので。
どうも私はそういう感情的に浮き沈みが強くなりがちな状況が苦手です。
その点ライスワークくらいの距離感だと、理不尽があっても仕事だからなあ、と心の防衛ができるし、どうしても無理であれば仕事や職場を変えるという選択肢も取りやすいです。
振り返ると、長い時間はかかってもこういうスタイルにたどり着けたのは、自立の大きな一歩だったと思います。
*1:大きな要因として現場派遣型の業態だったため、勤務地や勤務時間、勤務内容が安定しなかったということもあり、そういう仕事は嫌だなということもあった
*2:後に転職した会社でもっとどん底体験をすることになる
文=柊 クイチ/『トワイライツ・ノーツ』より転載 web:http://sueshee.hatenablog.com/entry/20181010/1539123470
わたしの自立キャンペーンの大賞&優秀賞を発表中
大賞1記事、優秀賞10記事はこちらで紹介しています
https://woman.chintai/article/news/0433_hatena-results/
はてなブログお題キャンペーン「#わたしの自立」についての詳細はこちら
https://woman.chintai/page/concept/
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http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/chintai2018autumn/
はてなブログサイト内 大賞&優秀賞発表ページ(※外部サイト)
http://blog.hatenablog.com/entry/chintai2018autumn_result
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