- odekake
- 2019/05/20
鎌倉駅から江ノ電に乗り換え3駅。降り立ったのは、大仏さまや観音さまで有名な長谷駅。今回ご紹介する「Bread Code by recette(ブレッドコード バイ ルセット)」は、厳選した国産素材のみを使用している食パン専門店です。
本店は、長谷駅から徒歩5分。食パンをこよなく愛す「Bread Code」のスタッフさんに、独自のこだわりや特に人気のパン、おいしく食べるコツ、買い求めやすい時間帯・時期などについてたっぷり伺いました。
目次
江ノ電沿い、坂ノ下に漂う焼き立てパンの香り
この日はよく晴れた行楽日和。平日の早い時間だからか、長谷駅で下車した人はそこまで多くありませんでした。
緑の山々に囲まれた街にはのんびりとした空気が流れています。線路沿いを歩いている途中で「カンカンカンカン」と、どこか懐かしい踏切の音が聞こえてきました。
極楽寺方面に線路沿いを進み、突き当たりで左に曲がると大通りに出ます。向かい側の右手に見える黒い屋根のお店が「Bread Code」。白いのれんがはためく、シックな佇まいです。
焼き立てパンの香りに誘われるようにフラフラとお店に近づく私。パンが焼ける香りって、それだけで幸せな気分になりますよね。時刻は午前9時半。開店30分前です。店内を覗いてみると、こんがりと良い色の食パンが並んでいます。
実は、この日は少し寝坊してしまい朝ごはん抜き。お腹が空いたな……と考えていると、扉のガラス越しにスタッフさんと目が合いました。
「おはようございますー」
スタッフの松葉さんが、笑顔で出迎えてくれました。
鎌倉から世界へ。「これぞ日本のパン」と認められるパンをつくりたい
「Bread Code」を運営するのは、ネット通販専門の最高級パン専門店「recette(ルセット)」。「recette」のコンセプトが「特別なハレの日に食べてほしいパン」なのに対して、「Bread Code」では「毎日食べてほしいパン」を取り扱っているのだとか。
現在、「Bread Code」は本店に加え、長谷店(高徳院や長谷寺の近く)と小町店(鎌倉駅の小町通りからすぐ)の3店舗を展開しています。鎌倉への出店にこだわる理由は何なのでしょうか?
松葉さん:「『Bread Code』の食パンはネット通販もしていないので、鎌倉に足を運んでいただかないと食べられないんです。鎌倉は、世界中からたくさんの人々が訪れる場所。この街から、世界に通用する『日本ならではのパン』を発信したいと考えています」
「Bread Code」は「これぞ日本のパン」と認められるようなパンづくりを目指しているのだそう。確かに、フランスパンやドイツパンはありますが、日本を代表するパンは思い浮かばないかも。
松葉さん:「そうですよね。でも、日本の食パンはすでに海外でも評価が高いんですよ。『Bread Code=パンの規定』という店名のように、日本のパンの見本となるような食パンをつくりたいですね。そのためにも、小麦はもちろん、バターや塩、酵母まで、上質な国産素材にこだわり続けています」
【朝10時販売】それぞれの食感が楽しめる3種の「もっちり系」食パン
「Bread Code」のブロック食パンは全部で5種ありますが、開店からお店に並ぶのは、「山型食パン(プレーン)」「角型食パン(プレーン)」「角型食パン(リッチ)」の3種。
それぞれの食パンには、どんな特徴があるんですか?
松葉さん:「3種とも、1.5斤サイズの型に2斤分の生地を入れて焼き上げるので、密度の高いもっちり感が楽しめます。山型食パン(プレーン)と角型食パン(プレーン)に使われている生地はまったく同じものです」
基本の生地を焼き上げた山型食パン(プレーン)と角型食パン(プレーン)
上部がまあるくふくらんだ山型食パンと、ころんと四角いフォルムの角型食パン。かたちの違いは焼き方の違いによるものなのだとか。「同じプレーン生地を使っていても、食感は少し異なるんですよ」と松葉さん。
松葉さん:「山型食パンはフタをせずに焼き上げるので上部がふくらんでいます。角型食パンはフタをして焼くので上部も平らです。角型食パンはぎゅーっと六面を圧迫されて焼かれるので、より生地の詰まったモチモチ食感に。山型食パンとの違いは、トーストすると分かりやすいです。トーストした山型食パンは、外はさっくり、中はもっちりで本当においしんですよ。私の一番好きなパンです」
豊かなバターの風味が広がる角型食パン(リッチ)
プレーン生地にバターを練り込んで焼き上げたのが、角型食パン(リッチ)です。
松葉さん:「角型食パン(リッチ)の魅力は、やっぱりバターの甘みと風味。油脂がある分、プレーン2種と比べてもっちり感は控えめです。リッチには根強いファンがいて、リピーター率はナンバーワンです」
プレーンとリッチを食べ比べたいときは「ミニ食パン」をチョイス
プレーンとリッチを気軽に食べ比べたいという要望から生まれたのが、「ミニ食パン(プレーン)」と「ミニ食パン(リッチ)」。手の中に収まるサイズ感で、食べ歩きにもぴったりです。
のちほど私も、2種のミニ食パンを食べ比べたいと思います!
【14時販売】2種の「ふんわり系」食パンは数量限定。1番人気はとろける食感の「星の井食パン」!
お話を伺っている間、工房ではスタッフさんが、毎日14時にお店に並ぶ「鎌倉食パン」と「星の井食パン」の生地を仕込んでいました。
鎌倉食パンと星の井食パンは、1日に各20本ずつの数量限定販売。これをお目当てに、販売開始の1時間前にお店の前に並ぶお客さんも少なくないのだそう。
松葉さん:「朝から販売している食パンはトースト向きのパンなんですが、鎌倉食パンと星の井食パンは、まずは、焼かずに味わっていただきたいです。生地に牛乳と無糖練乳を使用しているので、ふんわりしていてコクと甘みがあります。実は、この2種も生地自体は同じものなんです。だけど、味はかなり違います。星の井食パンの方が、より甘く感じるはずです」
その秘密は「水分量」にアリ。鎌倉食パンの開発中、誤って水分量の多いドロドロの生地ができてしまい、試しに焼いてみたところ、意外においしかったことをきっかけに、星の井食パンが誕生しました。
「星の井食パン独特の『とろける』食感の鍵を握るのが多めの水分量。舌触りのなめらかさで、甘みを強く感じるみたいですね。今では、『Bread Code』で一番人気のパンになりました」
ミスから生まれた看板メニュー。なんだかドラマチックですね。「星の井」というネーミングも素敵です。何か由来があるのでしょうか?
「本店の目の前の大通りは『星の井通り』といいます。すぐ近くに『星の井』という歴史ある井戸も遺されているんですよ。そちらにあやかって名付けました。ロマンチックな言い伝えのある井戸ですので、ぜひ見に行ってみてくださいね」
食パンを知り尽くしたスタッフに聞く! 5種のパンのおいしい食べ方
「もっちり系」食パン3種と、「ふんわり系」食パン2種。松葉さんに、それぞれのおすすめの食べ方を聞いてみました。
もっちり系食パンはトーストやサンドイッチ向き。フレンチトーストにしても
「もっちり系の3種は、朝ごはんとして食べていただきたいです。プレーンは、シンプルにトーストしてバターを塗るのもいいですし、卵やチーズにも合うのでサンドイッチもおすすめ。リッチは、フレンチトーストにするとびっくりするくらいおいしいです。バターの風味が引き立つので、休日の朝など、リッチな朝ごはんを食べたい気分のときにぴったりですよ」
みっちりと詰まった生地感も、朝から販売している3種の大きな特徴。「市販の食パンよりもかなり食べごたえがあるので、普段の厚さで切るとお腹いっぱいになっちゃうかも(笑)。私は、いつも薄めにカットしています」
松葉さんは、山型食パン(プレーン)を5ミリ程度の薄さにスライスして、しっかり焼いて食べるのが好きなのだそう。「こんがり焼けた表面のクリスピーな食感がたまらないんですよね」とのこと。真似してみたい楽しみ方です。
ふんわり系食パンは何も塗らずそのままで。おやつ感覚で楽しんで
ふんわり系の2種は「おやつ感覚で、何も塗らずにそのまま食べてほしいかな」と松葉さん。言われてみれば、販売時間もおやつどき。
松葉さん:「星の井食パンは、スイーツみたいな食パンだと思っているんです。あたたかいコーヒーや紅茶といっしょに味わうと、ケーキを食べたときのような満足感があります」
スタッフ直伝。「Bread Code」の食パンを上手に冷凍するコツ
すべての食パンの賞味期限は常温で3日間。冷凍する際は乾燥を防ぐため、カットした食パンを一枚一枚ラップで包み、フリーザーバッグに入れて冷凍すれば、解凍後も、冷凍前と変わらぬおいしさを味わえます。
松葉さん:「冷凍した食パンを食べる場合、もっちり系食パンはよく焼いて、ふんわり系食パンは軽く焼くのをおすすめしています」
買いやすいのは平日の午前中。 真夏や真冬も狙い目かも
10時の開店後は、ひっきりなしにお客さんがやってきます。焼き立てパンの良い香りに誘われてお店に立ち寄る観光客の方も。ご近所に住んでいるのだという常連さんが、「いつも混んでいるから、家の窓からちょっと覗いて、空いているときを見計らって買いに来ているの」と教えてくれました。
土日には、開店前から長蛇の列ができることも多い「Bread Code」。買いやすい時間帯などはあるのでしょうか?
松葉さん:「平日の午前中なら、比較的すぐにご購入いただけると思います。14時から販売するパンは、土日には15分くらいで売り切れてしまうこともあり、お目当てのパンを必ず買いたいという場合、やはり平日のご来店がおすすめです。春から初夏にかけては鎌倉観光のベストシーズンなので、しばらく混雑が続くと思います……例年、真夏や真冬は落ち着いていますよ」
鎌倉の海を眺めながら、2種の食パンを贅沢に食べ比べ
取材後、私が購入したのは、ミニ食パン(プレーン)とミニ食パン(リッチ)、そして、松葉さんいち押しの山型食パン(プレーン)。
「ありがとうございました。また来てくださいね」
松葉さんの明るい声に見送られ、「Bread Code」の脇の小路に入ります。小路の奥に残るのは、昔ながらの漁村の風情。古民家を改装した雰囲気のあるカフェが何軒も立ち並ぶエリアでもあります。
その中の一軒が「café recette(カフェルセット)鎌倉」。「Bread Code」の母体、「recette(ルセット)」が運営するパンスイーツ専門カフェです。
松葉さんもそのおいしさに感動したという「究極の食事系フレンチトースト」は、ベーコンと目玉焼きの乗ったフレンチトーストに、自家製のメイプルソースをかけていただく逸品。
次回、「Bread Code」を訪れたときには併せて立ち寄りたいと思います。
小路を抜けると一気に視界が開け、目の前には鎌倉の海が。
ちょうど引き潮の時間帯で、濡れた広い砂浜を小さな男の子が元気に走り回っていました。
紙袋からミニ食パンを取り出す前に上空を見回します。鎌倉の海沿いにはトンビが多く、人の手から食べ物を奪っていくこともあると聞きました。ひとまず、近くにトンビがいないことを確認。野生のハンターに勘付かれないうちに、プレーンのミニ食パンをぱくり。
表面のしっかりした歯ごたえと、内側の包み込むようなもっちり感。けっして固くはないのですが、噛めば噛むほど感じられる旨みがあります。きっとこれが、国産素材の旨み。
続いて、リッチのミニ食パンも頬張ります。こちらは、口に入れた瞬間に芳醇なバターの香りが鼻に抜けました。ベースの生地は同じでも、練り込んだバターの有無でこんなに違った味わいになるなんて。涼しい潮風に吹かれながら、食パンの奥深さにもっと触れてみたくなりました。
鎌倉で、暮らすように過ごす休日。お供は「Bread Code」の食パン
無事、トンビに狙われることもなく2種のミニ食パンを半分ずつ食べ終えました。帰路につく前に、腹ごなしのお散歩へ。
星の井食パンというネーミングの由来となった井戸「星の井」の水は、昭和初期まで飲料水として売られていたのだそう。案内板には「はるか昔、この井戸を覗き込むと、昼間でも星の影が見えた」という言い伝えが記されています。確かに、なかなかロマンチックです。
気の向くままにシャッターを切っていると、楽しそうな話し声が聞こえてきます。立ち話に花を咲かせるおばあさんたちの横を通り過ぎるとき、ふと、のんびりした時間が流れる海沿いの街の「日常」に溶け込んでいる自分に気づき、心地良さを感じました。
「暮らすように旅をする」って、こういう瞬間の積み重ねなのかも。
鎌倉は花盛り。名所のお花もいいけれど、地に足のついた「暮らし」のある街角に咲く、名前を知らない小さな花も綺麗です。
次の週末には、鎌倉でしか出会えない食パンといっしょに、「暮らすように過ごす」鎌倉・坂ノ下での休日を楽しみませんか?
Bread Code by recette(本店)
神奈川県鎌倉市坂ノ下22-23
TEL:0467-53-7307
営業時間:10:00-17:00 ※売り切れ次第終了
定休日:不定休(公式サイトのお知らせに掲載)
http://bread-code.com/
café recette 鎌倉
神奈川県鎌倉市坂ノ下22-5
TEL:0467-38-5700
営業時間:9:30-17:00 ※土日祝は8:30から
定休日:無休
http://cafe-recette.com/
取材・執筆:菊地 飛鳥
※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。
※金額など掲載されている情報は記事公開時点のものです。変更されている場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
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