新宿のカフェ・喫茶店「名曲・珈琲 新宿らんぶる」 ― 心の「余白」をつくる夜の時間 | 女性の一人暮らし・賃貸物件なら【Woman.CHINTAI】    
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心の「余白」をつくる、わたしだけの夜 ― 新宿の名曲喫茶「らんぶる」

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今日はひとりで頭をからっぽにしたい。あの読みかけの本も読んでしまいたいな。
仕事帰りにひとりで落ち着ける場所を探して、新宿三丁目駅のすぐそばにある老舗の名曲喫茶「名曲・珈琲 新宿らんぶる」を訪れました。「らんぶる」は、開店から70年近く新宿の街を見守り続けている、懐の広い喫茶店でした。

新宿三丁目から徒歩2分、黄色い看板が目印の「らんぶる」

副都心線の新宿三丁目の駅を出て、少し裏に入った通りに「らんぶる」はありました。
新宿駅からは、東南口を出て3分ほど。大通りを通らずに行けるので、人混みで歩けないということにはならなそうです。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の黄色の看板

ちょうど新宿通りにある「新宿マルイ本館」の裏手、「大塚家具」や「ビームス ジャパン」の向かいに大きな黄色い看板が出ています。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の黄色の看板

新宿・新宿三丁目エリアは飲み会で来ることの多い私ですが、駅の近くでゆっくり落ち着けるお店はなかなか見つけられないと思っていました。赤レンガのクラシカルな外観に胸を高鳴らせながら、お店に入ります。

まるでダンスホール! 昭和の面影がそこかしこに

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の店内

中に入ると昭和モダンな、まさに「昔ながらの喫茶店」という印象を受けました。
1階は喫煙席になっており、地下が禁煙席になっています。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」への階段

入り口すぐの階段を降りると、外観からは想像できないほど広々としたホールがあり驚きました。
地下にこんな天井の高いホールがあるとは。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の店内

さらに階段を降りると、なんだかダンスホールに足を踏み入れたような、ちょっと特別な気分が味わえます。店内は落ち着いたBGMで、優しい雰囲気が流れています。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」のシャンデリア

最近あまり見かけないビロードの椅子やシャンデリアにも目を奪われました。
飲食店やショップでにぎわう外の新宿の街並みを忘れさせる、昭和の時代にタイムスリップしたかのような異空間。

ゆったりくつろぎの時間を提供したい。「らんぶる」のコンセプトとは

今回、店長の重光さんにお話を伺いました。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の店長

重光さん:「『らんぶる』では、お客さまがいつでもゆっくりできる時間を提供したいと考えています。店内は全部で200席ありますが、少しゆとりをもってご案内していますので、混雑時もどの席に座ったお客さまにもゆっくりくつろいでいただけるかと思います」

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の店内

天井が高く開放感があり、各座席の通路もゆとりがあります。昔ながらのボックス席はほっとする座り心地。少し背が高くプライベートな空間もしっかり守られている感じがします。混雑時も、まわりのお客さんのことが気になりにくいつくりになっているよう。

開店当初から69年間らんぶるを見守るテーブルと椅子

ホールに降りる階段の手すり、ビロードの椅子、どれも深い飴色になり、時間の重みを感じさせます。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の店内

重光さん:「『らんぶる』は今年開店から69周年。来年のオリンピックの年に70周年になるんですよ。このビル自体は2回建て直しをしていますが、テーブルとイスは、開店当初から布地を張り替えたり、傷んだところを修理に出したりして使い続けているんです」

1950年に誰かが座っていた椅子を使っていると思うと、ちょっと不思議な気持ちになりました。もしかしたらおじいちゃんが若い頃に座ったこともあるのかもしれないな、なんて想像をしてしまいます。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の店内

重光さん:「ホールの奥が鏡張りになっていますよね。最近は奥一面がすべて鏡張りのお店は珍しくなっていますが、これも昔ながらのデザインです。当時はヨーロッパの建築を意識してつくったのだと思うのですが、今では日本らしい『昭和レトロ』だということで、海外のお客さまも多くいらっしゃるんです」

通訳やガイドの方に紹介されて、わざわざお店を訪れる外国の方も多いのだとか。開店当初先進的だったデザインは、日本文化と混ざって「昭和レトロ」という文化になっているんだな、と感じます。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の床
ふと足元を見下ろせば……! 乙女ごころをくすぐるアールヌーヴォー調のタイル

よく見ると床もノスタルジックな柄が珍しく、「ジリリリ……」と鳴るピンクのダイヤル式電話機も今となっては新鮮です。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」のダイヤル式電話機
空間すべてが文化遺産。ずっと残っていてほしい

昔ながらのメロンソーダが童心をくすぐる

いつも喫茶店に来るとコーヒーを頼むのですが、今回はメロンソーダ(ソーダ水)とピザトーストを注文してみました。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」のピザトーストとソーダ水(メロンソーダ)

あつあつのピザトーストは、チーズがたっぷりのっています。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」のピザトースト

トマトソースが塗られたパンに、スライスされたフレッシュトマトものってみずみずしい。厚切りパンはしっかりとした食べ応えなので、夜ごはんとして頼む女性も多いそうです。

夜メニューとしてはロールパンサンドも人気だそうで、軽めに食べたい人にはそちらがおすすめ。食事をするほどではないけれど、と思うのであればバナナジュースをオーダーする方も多いのだとか。そのほか、スパゲッティやピラフのセットなど、お腹をしっかり満たしてくれるメニューもあってうれしい。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」のソーダ水(メロンソーダ)

メロンソーダは、赤いさくらんぼがうれしくて、なんだか小さいころに戻ったようなうれしい気持ち。ちょっと背伸びをして母と行った近所の喫茶店を思い出しました。

変わり続ける新宿の街。その中でも変わらないものとは

「らんぶる」で働きはじめて18年になるという重光さん。そんな重光さんからみた新宿はどんな街なのか、お話していただきました。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の黄色の看板

重光さん:「新宿の街自体、副都心線の乗り入れがあったり、新しい商業施設ができたりといろいろな変化があって、私が働き始めてからずっと人が増え続けている印象ですね。お店の入れ替わりも激しいです」

休みの日に来ると、「人が多いなあ」と感じるものの、増えている印象はありませんでした。

重光さん:「『伊勢丹』をはじめとした百貨店やブランドショップ、レコード屋や映画館、飲み屋街など、いろいろな目的で来る人がいますが、エリアによってうまく棲み分けができているのではないでしょうか」

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の外観

重光さん:「いろいろなお店があって、いろいろな人がいる。変化の多い新宿ですが、そんな中でも変わらないのは『どんな人でも受け入れてくれる街の器の大きさ』だと思っています。新宿に来たら、そんな雑多なごちゃまぜ感を味わってもらいたいですね」

多くのクラシックファンに愛された名曲喫茶

「らんぶる」がオープンした昭和30年代は、レコード盤は買えても、レコードプレーヤーは手が出ない、という人が多かったそうです。
個人で音楽を楽しむにはまだまだハードルが高い時代、「らんぶる」はこだわりの音響再生装置でクラシックレコードをかける名曲喫茶として愛されてきました。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」にあるベートーベン

重光さん「当時はお客さまのリクエストで曲をかける、ということをやっていました。今は、音楽はどちらかというと脇役。背景音楽(BGM)としてそっとかけています。お客さま同士で会話を楽しめて、おひとりの方もゆったりとできる居心地のいい環境をいちばんに考えています」

なにかに没頭しても、なにもしなくてもOK。ひとりの時間を楽しんで

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」のシート

重光さん:「お客さまは近所の常連さん、ご年配の方から若い方まで幅広くいらっしゃいます。おひとりで来られた女性は、読書や書きものをされている方が多いのですが、何もせず考え事などをされている方もいらっしゃいますね」

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」のアンティークな照明

重光さん:「趣味の時間に使っていただくのも、頭の中を空っぽにしてリフレッシュに使っていただくのも、どちらでもいいと思っています。ゆっくりとしていっていただければ」

レトロな空間に、ふかふかと座り心地のよい椅子は、私を丸ごと受け入れてくれるような懐の深さを感じました。満員電車のことやちょっとモヤモヤすることも忘れてしまいそうです。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」のソーダ水(メロンソーダ)

「眠らない街」ともいわれる新宿は、平日の夜でもたくさんの人が行き交っています。ひとりひとりのスペースがゆったりと確保できる「らんぶる」は、そんな騒がしさと少し距離を置いて、自分だけの時間を過ごすのにうってつけです。

新宿「名曲・珈琲 らんぶる」の店内

誰かと話さなくても、スマホでつながらなくても、ただぼーっとできる。
だれともつながらない時間をつくることで、頭の中に少し余白ができるような気がしました。
自分の好きなように時間を使いたくなった夜は、「らんぶる」を訪れてみてはいかがでしょうか。

名曲・珈琲 新宿らんぶる

東京都新宿区新宿3-31-3
TEL: 03-3352-3361
営業時間:9:30-23:00(L.O.22:30)
定休日:無休

取材・執筆:太田 みき

※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。

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