- odekake
- 2019/03/22
「It Wokashi(イトヲカシ)」。いとをかし、と読むそのお店は新しい和菓子の形をつくっています。つくり手は300年続く老舗和菓子店の16代目、竹口久嗣さん。和菓子の概念にとどまらないスイーツをつくろうと誕生したのが「It Daifuku(イトダイフク )」と名付けられた、これまでにないこだわりの大福です。
「It Wokashi」について知るべく訪れたのは東急大井町線自由が丘駅と、おとなり九品仏駅の間にある、できたてのお店でした。
目次
「It Wokashi(イトヲカシ)」ってどんなお店?
東急大井町線、九品仏駅から少し歩いたところ。踏切の手前にあるできたばかりのお店が「It Wokashi」です。三重県鈴鹿市で300年続く老舗和菓子店「大徳屋 長久」の16代目で和菓子職人の竹口久嗣さんが「伝統にとらわれないお菓子を発信していきたい」という思いでつくった、新しいカタチの和菓子のお店です。
今日お話を聞かせてくださったのは、マネージャーの川合将之さん。
川合さん:「代表の竹口は家業を守っていく中で『世界中に和菓子を届けたい』と考えたんです。同時に、和菓子業界の発展や若い人にもワクワクしてもらえるような『新しい和菓子』を作りたい、と」
シンプルな九品仏のお店
白を基調としたシンプルなつくりのお店はDIYをして改装しました。 店内には大福とレジが並ぶだけ、さっぱりと無駄のない内装です。足元に置かれているアンティークな木の置物は、お店の大家さんが趣味で拾ってきた流木なんだとか。
川合さん:「お店のお客さまはご近所の方が多いですね。自由が丘からも歩ける距離なので、少し足を伸ばして散歩がてら通りがかり、購入するお客さまもいらっしゃいます」
新しいスタイルの大福がめずらしいと、手みやげに買っていく人も多いのだとか。
新しい大福。ふわとろ新食感のひみつは中身
新しいブランドである「It Wokashi」の唯一の商品が、この「It Daifuku(イトダイフク)」。「新しい和菓子」をつくるにあたり、はじめに生み出されたのが大福だったからです。
川合さん:「和菓子をあまり食べない人にも手に取りやすいのでは?と考え、大福がえらばれました。これまでの大福の概念を飛び越える、そしてお客さんに選んでもらえる『新しい大福』をめざして試行錯誤の末うまれた和菓子です」
この和菓子の特徴は冷凍された状態で受け取ること。夏場でなければ常温で1時間ほどで自然解凍され、とろとろふわふわの食べごろに。
一般の大福はお餅であんを包んだものですが、「It Daifuku」は小豆や白餡、そして生クリームでできた餡を求肥で包んでいます。これがふわふわ、とろとろ、新感覚のひみつです。
カラフルな大福のお味は6種類
大福の味は6種類。一般的には白のイメージが強い大福ですが、「It Wokashi」が手がける大福の色はカラフルです。
白色の「粒餡&クリーム」
特製のクリーム餡をプレーンの求肥で包んだ一般的な大福に近い組み合わせ。「新しさ」を一番感じるのはこの味かもしれません。
ピンクの「苺&ピンクペッパー」
ピンクペッパーを練りこんだクリーム餡を、いちごを練りこんだ求肥で包んだビビットピンクが目を引く大福。ピンクペッパーのスパイスが効いています。
オレンジの「胡麻&マンゴー」
マンゴーピュレを練りこんだクリーム餡を胡麻を入れた求肥で包んだもの。マンゴーの主張は強くなく、ほんのり香る程度でクリーム餡や求肥のもちもち感と喧嘩しません。
紫の「葡萄&ラム」
ラムレーズンを練りこんだクリーム餡をぶどう味の求肥で包んだ大人の雰囲気の大福。ラム酒が入っていますが、作る過程でアルコールは飛ばしているのでお子さんやアルコールが苦手な方でも楽しめます。
緑の「抹茶&レモン」
普通のレモンに比べ甘みのある品種「マイヤーレモン」のペーストを練りこんだクリーム餡を抹茶を練りこんだ求肥で包んだ大福。レモンの爽やかさと抹茶の香りのバランスがいいので、食後のデザートとしてもさっぱり食べられます。
茶色の「烏龍茶&杏仁」
杏仁豆腐をイメージした味付けをしたクリーム餡を烏龍茶味の求肥で包んだエキゾチックな大福です。
一見少し驚いてしまうビビットカラーの大福ですが、食べてみるとどれも繊細で控えめな味です。
時間によって変わる食感が楽しい大福
「It Daifuku」の特徴は冷凍した状態でも解凍された後でもおいしくいただけること。冷凍された状態では、まるでアイスのように。さっくりとした食感でさっぱりと食べることができます。
全解凍すると手で摘んで持ち上げるのも難しいくらいにふわふわに。とはいえ、解凍された状態でも中の餡が溶けてしまうことはありません。餡は小豆と生クリームで作られたクリーム餡なので、解凍されてもべちゃっとなることはなくふわっとおいしくいただけます。おしゃべりを楽しみながらのお菓子としてもぴったり。
消費期限は解凍後冷蔵保存で翌日まで。冷凍庫に入れておけば1ヶ月ほど保存ができるそうです。
新しい和菓子への思いで生まれた新ブランド
「新しい和菓子」への思いを持ったのは、代表の竹口さんが和菓子の専門学校で講師をしていたとき。若い世代から見る和菓子業界は「やってみたい」と思うような状況ではない、と感じたのがきっかけでした。
イメージが形になったのは竹口さんと、「It Wokashi」のコンセプトメイクにたずさわった TETOTETO Inc.の井上豪希さんとの出会いから。井上さんを旗振りに、仲間と一緒に新しく「兆久」という会社を立ち上げ、新しい軸で和菓子作りに挑んでいきます。
クラウドファンディングで広がる新しいチーム
「It Wokashi」はプロジェクトが始まった当初、ECでの販売のみを考えていました。しかし、ひょんなきっかけで見つけたのが、現在お店のある自由が丘の空き店舗です。It Wokashiの商品たちを多くの人に届けたい。「It Wokashi」の世界観をもっと表現したい……そんな思いから、東京に実店舗を構えることにしました。
そこで挑戦したのがクラウドファンディング。
新しい和菓子に惹かれた人も多く、目標額の30万円を公開から5日目にして早くも達成することができました。ストレッチゴールとして設定したパトロンの数も無事に達成。
川合さん:「『TEAMKIT』というサービスを利用して、仲間も募集しました。デザイナーやライターなどの異業種からの仲間を迎えることもでき、いっそう多くの人に『It Wokashi』を伝えることができるようになりました」
クラウドファンディングやプラットフォームなどを柔軟に活用しながら「新しい和菓子」を生みだす「It Wokashi」。軽やかに、思いを持って進んでいくチームの雰囲気を感じます。
「It Wokashi」のネーミングに込められた思い
「It Wokashi」というネーミングにはブランドへの強い思いが込められています。「いとをかし」を現代語訳すると「趣深い」という意味です。
川合さん:「英語表記の『It Wokashi』には『It girl(”今風のかっこいい女性”の意味)』の表現を倣い『今風のかっこいい和菓子』でありたい、という思いを込めました」
ロゴのモチーフは兆久と長久に共通した「久」の字をデザインモチーフにしています。また、「大徳屋 長久」は世襲制。竹口さんは将来「久兵衛」の名前を継ぐということもあり「久」の字をロゴデザインに使っています。
「It Wokashi」のこれから
まだまだ走り出したばかりの「It Wokashi」。チャレンジはつづきます。DJイベントに『It Daifuku』を出品するアイデアもあるのだとか。なかなか共通のイメージがない和菓子とDJですが……?
川合さん:「『いとをかし』を少し崩して現代語訳すると『まじやべー』だと思っていて。ヒップホップとのコラボとか、色々面白いことできないかな? と考えているところです」
店舗販売だけでなく、飲食店での提供も視野に入れている「It Wokashi」。取扱店は和食のお店に留まらず、中華料理店でも気に入ってもらえているのだとか。枠にはまらない、新しい和菓子の形として広がっています。
これから育つブランドを見つめる楽しみ
300年続く老舗和菓子店が柔軟な発想で挑戦する「It Wokashi」。次はどんな新しい和菓子を誕生させていくのでしょう。
少しずつ増えていくラインナップからブランドの成長を感じつつ、和菓子の世界の広がりを楽しんでみませんか。
It Wokashi(イトヲカシ)
東京都世田谷区奥沢7-19-17
TEL:03-6882-0005
営業時間:10:00-17:00
定休日:不定休(Instagramをご確認ください)
https://itwokashi.official.ec/
Instagram
取材・執筆:ツチヤ トモイ
※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。
※金額など掲載されている情報は記事公開時点のものです。変更されている場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
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