- odekake
- 2019/02/13
目次
忙しい日々が続くと、週末はつい引きこもりがち。思い切って遠出がしたいけど、せめてもの気分転換によい場所はないかな。そんな時に見つけたのが、渋谷に新しくできた「マスタードホテル」。
辛そうな名前をしているけど、どうやら、街の“スパイス”となる場所のようです。せっかくなら、仕事帰りに行ってみよう。人が行き交う街・渋谷の、中心から少しだけ離れた場所で過ごす一夜。そこには、泊まるだけじゃない、街を楽しむための仕掛けがいたるところにありました。
並木橋駅をデザインテーマにした、レトロモダンな内装
「MUSTARD™ HOTEL SHIBUYA(マスタードホテル渋谷)」は、再開発が進む渋谷駅南側の渋南(しぶなん)エリアに、2018年10月に誕生した宿泊施設。かつて東横線が走っていた線路跡地を再生し、保育所・ホテル・店舗・オフィスからなる複合施設「渋谷ブリッジ」の大部分を占めています。
ホテルへ行くには、新南口からのアクセスが便利。駅周辺は、大勢の人で賑わうハチ公口とはうって変わって、オフィス街や住宅街のある落ち着いた雰囲気です。
まずは改札を出てエスカレーターを降り、横断歩道を渡ったら、すぐに右折。そのまま線路沿いに直進し、高架線下をくぐって歩くこと数分。東1丁目の交差点を左折すると「渋谷ブリッジ」が見えてきます。
渋谷駅西口にあるモヤイ像からは、歩道橋で国道246号線の反対側に渡り、JR線のガード下をくぐって、東口側に出た後に右折。そのまま直進すると、新南口改札に出ます。
一見オフィスビルのように見えますが、黄色い看板と黄色い椅子が並んだエントランスが目印。
なんとこのホテル、戦時中まで渋谷〜代官山間に存在した東横線の幻の駅、「並木橋駅」をデザインテーマにしたのだとか。内装のいたるところに「駅」の面影が見られます。
1階エントランスの黄色い椅子に、壁や柱に見られる赤い縞模様は、駅のホームのよう。
受付カウンター兼コンシェルジュは、切符売り場のような見た目をしています。レトロモダンな内装に心を弾ませつつ、まずはチェックインの手続き。文房具やカードキーなど、あちらこちらにマスタードイエローが使われているのもかわいいポイント。
バックパッカーから家族連れまで ニーズに合わせた部屋
客室数は全部で76部屋。1階には24時間対応のフロントと、朝8時から深夜24時まで営業しているレストラン、2階から6階が客室、7階がバルコニーと共有スペースになっています。
客室タイプはドミトリー、ツイン・ダブル、デラックス、ファミリー、アクセシブルの全9タイプ。料金は、ドミトリータイプの部屋が一人あたり4,000円台からと、比較的リーズナブル。デラックスタイプのお部屋は、ハイシーズンで最大60,000円(一部屋あたり)となっています。また、すべての宿泊料金にレストラン「Megan」で使える1,000円分の朝食券がついています。
左上:バックパッカーやひとり旅はもちろん、家族連れの方は、ドミトリーを貸し切って、個室として利用することもできるドミトリー。
右上:コンパクトながら使いやすい、秘密基地感を味わえるプライベートダブル。友人と泊まるならツイン、カップルならダブルといった風に使い分けられそう。
左下:ユニットバスのほか、冷蔵庫や湯沸かしポット、Netflixが見られるテレビがついている「マスタードデラックス」。
右下:最大7名まで泊まれる大部屋「マスタードコンフォート」。横並びに置かれたベッドで、雑魚寝をしながら夜な夜なおしゃべりを楽しめる。
“あったらいいな”をそろえた自販機や、簡易キッチン・ランドリー
3階はランドリー、7階は自販機や簡易キッチンを備えた共有スペース(24時間利用可)があるので、長期滞在する際には重宝しそうです。自販機は、スナック菓子だけでなく、花札や写ルンですなどの変わり種をそろえたラインナップ。
まぶしいくらい真っ白な廊下……テーマはコンビニ!
部屋へ行くのに、はじめに遭遇するのが、SF映画に登場しそうな真っ白な廊下。あまりの眩しさに思わず、目を細めてしまいます。
ホテルというと、廊下は暗めで部屋は明るいところが多い気がしますが、真逆の設計にした理由はなんだったのでしょう。支配人の木村陽さんからは、意外な回答が飛び出しました。
木村さん:「ドミトリーを使う女性にとって、ひとりで薄暗い廊下を歩くのは怖いのでは? というデザイナーの気づかいがありました。これだけ明るければ悪さはできないだろうという意図もあり、安全面を考慮しつつも、実は、裏のテーマは『コンビニ』なんです。24時間営業していて、いつでも明るく清潔。日本の象徴のようなコンビニを体現しながら、『コンビニのように気軽にホテルを使ってほしい』というデザイナーの意図が反映されています」
部屋になにもないのは、街になんでもあるから
部屋には必要最低限のアメニティと、小さなテーブルと椅子があるのみ。どこまでもシンプルにミニマルな空間にしたことにも、こだわりがありました。
木村さん:「渋谷の街に出ればなんでもあるので、部屋の内装は白を基調に、街でインプットしてきたものを広げるキャンバスのようなイメージにしています。思考をなるべくフラットにして、一日の思い出や、旅先で経験したものを振り返れるように、室内の情報量は少なくしました。」
あくまでも、部屋は自分を充電する場所。代わりに部屋から一歩出れば、遊びモードに切り替えられるように、廊下は眩しいくらいに明るく。まるで「もっと遊んでおいでよ」なんて言われたかのように、自然と身体のスリープ状態が解除されます。
ホテルは街に人を送り出すための装置
マスタードホテルのコンセプトは、“街のかくし味”のような存在になること。
木村さん:「渋谷という街をホットドッグに例えたら、王道はケチャップ。だけど、僕たちが目指したのは『マスタード』のほう。いる人にはいるけど、いらない人にはいらないもの。あくまでも主役は街で、『街を楽しむためのスパイス』のような存在として機能できるよう、工夫を凝らしています」
たとえば、フロントではスケートボードや「BMX」(自転車)のレンタルが可能。ホテルからは、恵比寿や代々木にもアクセスしやすく、色んなエリアまで足を伸ばすことができます。
木村さん:「地元に詳しいスタッフが、それぞれの個性を活かして、街の遊び方や最先端の情報など、お客様に自分たちのおすすめを提案します。音楽やお酒など、人によってサービスに違いがありますが、街を楽しんでほしいと思う気持ちは同じ。ホテルの役割は、街に人を送り出す装置のようなものです」
オールデイ営業のレストラン「Megan」でヘルシーな夕飯
部屋でひと休みした後は、ホテル1階に併設しているレストラン「Megan – bar & patisserie (ミーガン バー&パティスリー) 」へ。朝8時から夜24時までのオールデイ営業で、すべてハウスメイドのフードを提供しているこちらのお店。店内を見渡すと、バーカウンターに、美味しそうなケーキや焼き菓子の並んだショーケース、棚に敷き詰められたたくさんのレコードなどが目を惹きます。
カフェ・バー・パティスリーの3つを兼ね備えた「Megan」では、トラディッショナル、モダン、シンプルをテーマに、世界の料理の伝統的な調理法をベースにしつつ、盛り付けや、料理の組み合わせで新しさを追求。ビーガン(完全菜食主義者)や菜食思考など、現代の風潮を取り入れたメニューもそろえています。
この日は、「Megan」店長の今村広和さんオススメの「季節のベイクドベジタブル&フムス」(1,300円)をいただきました。
今村さん:「フムスだけだと味にメリハリがなくなってしまうので、野菜の中に、姫人参と姫大根のピクルスをグリルしたものを入れました。それによって、食感も楽しめるし酸味も加わって、料理全体にキレが出ます。ほかにも、芽キャベツは揚げていたり、水気が欲しいので白菜を入れたりと、食べ飽きないようにバランスを取った組み合わせにしています」
ワンプレートでも十分なボリューム。友人同士で、おつまみがわりにシェアして食べるのも良さそうです。
飲み物は、海外で人気急上昇中の「コンブチャ」(750円)。お茶由来の微炭酸発酵ドリンクで、乳酸菌や酵素などの栄養素がたっぷり含まれているため、飲むことで腸内環境を整えるはたらきが期待されているのだそう。白ワインのような見た目をしていますが、甘いソーダ水のような味で、飲みやすいです。
店内に流れるレコードの生音は、電子音とは違うあたたかな音色で、一日の疲れをほぐしてくれます。本棚に並べられたレコードは1,000枚以上。お店の雰囲気に合わせて、スタッフの方が選曲しています。
デザートには、“飲める”ケーキ?
お待ちかねのデザートタイムは、ペイストリー担当者おすすめの「トレス・レチェ」(700円)をいただきます。トレス・レチェは中南米の伝統菓子で、スペイン語で「3種類のミルクを使ったケーキ」という意味。
コンデンスミルク・ココナッツミルク・牛乳の3種類をたっぷり染み込ませたスポンジと、オリジナルブレンドのクリームが層になっています。担当者の方が「飲めるケーキ」と例えたとおり、クリームとスポンジの境目がわからないくらい柔らかくて、頰がとろけそう。クリームも甘すぎずさっぱりしているので、ペロリと食べられます。
お酒もお菓子も楽しめるバータイム
21時からのバータイムには、バーカウンターに焼き菓子が並べられます。
今村さん:「もちろんバーカウンターでスイーツだけ食べても良いですし、カクテルに焼き菓子、ワインにカヌレを合わせて食べるような楽しみ方もありますよ」
ここでわたしも、玉露茶と柚子を使った国産のジン“季の美”を使ったカクテルをいただきます。お茶の苦味と、柚子の香りがほのかに残る、不思議なお酒。
22時を回った「Megan」には、海外の旅行客や、PCで仕事をしているサラリーマンの方も見かけました。英語の飛び交う店内は、どこか非現実的で心地良く、都内にいながら、異国を旅している気分でリラックスして過ごせます。
ミニマルな空間で、心も身体もオフになる
お酒を呑んで、身体の力が程よく抜けたところで、部屋に戻って来ました。シャワーを浴びて、ベッドに体を横たえると、すぐに眠気が襲ってきます。ときどき、電車の通る音が聞こえる中、かつてこの場所にあったという駅に想いを馳せながら、いつのまにか眠りについてしまいました。
目が覚めたら、Meganで朝食を
目が覚めたのは朝8時。身支度を済ませて、ふたたび1階のレストランへ。いただいたのは、「平飼い卵のスクランブルエッグ&ブレッド」。パンは、クロワッサン、カンパーニュ、食パンの3種類から選べます。
今村さん:「朝起きて一番に食べてもらうものなので、身体に負担のかからないものや、ボリュームはあるけれど、胃がもたれにくいメニューにしています」
自家製トマトケチャップはあっさりとしていて、サラダ感覚で食べられます。朝食メニューは、ほかにも全粒粉を使ったパンケーキやクロックマダムなど、豊富なラインナップ。差額分を支払えば、1000円以上のメニューも注文できるとのこと。
夜の雰囲気とはまた違い、朝の日差しが大きな窓から差し込むのが気持ちいい。
座席の下には電源とWi-Fiがついているので、朝食後にデスクワークをする方もいるみたいです。
今度は友だちを誘って、思いっきり羽を伸ばそう
部屋に戻って窓の外をふと見ると、都営バスがちょうど出発したところ。太陽がのぼって、街全体が動き出す時間。いつも通りの平日の朝だけど、いつもとすこし違う。それはたぶん、渋谷の街に一晩たっぷり浸れたから。
マスタードホテルは、渋谷の街そのもの。いろんな人が行き交って、いろんなタイプの部屋があって、幅がある。
「そろそろ出かける時間だよ」と、ホテルがわたしを街へと送り出す。
今度は友人を誘って、この街で、思う存分羽を伸ばしてみよう。そんな気持ちを抱いたまま、朝の渋谷を後にしました。
MUSTARD™ HOTEL SHIBUYA
(マスタードホテル 渋谷)
東京都渋谷区東1丁目29-3 SHIBUYA BRIDGE B棟
TEL:03-6459-2842
https://mustardhotel.com/shibuya/
Megan bar & patisserie
(ミーガン バー&パティスリー)
東京都渋谷区東1丁目29-3 SHIBUYA BRIDGE B棟 1F
TEL:03-5962-7648
営業時間:8:00-24:00(23:30 L.O)
https://megan.jp/
取材・執筆:田中 未来
※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。
※金額など掲載されている情報は記事公開時点のものです。変更されている場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
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