- odekake
- 2019/04/15
目次
那須の“おいしい”を満喫できる複合施設「Chus(チャウス)」
自然豊かな土地、栃木県那須塩原市の黒磯。東京駅から東北新幹線で那須塩原駅まで75分。そこから宇都宮線に乗り換えてひと駅。
おしゃれなカフェや雑貨屋が並ぶ駅周辺は、近年「裏那須」エリアとして注目を集めています。少し足を伸ばせば温泉や現代アートの美術館などもある街で、日帰りするにはもったいない。せっかくなら、どこかに泊まれる場所はないかな。
今回宿泊した「Chus(チャウス)」は、マルシェ・ダイニング・ゲストハウスの3つのコンテンツからなる複合施設。「大きな食卓」をテーマに那須のおいしい食材をそろえ、人と人とがつながる場所。那須をまるごと味わえる「Chus」を拠点に、春の黒磯旅を満喫してきました。
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あらゆる人が、食を通してつながれる場所
JR黒磯駅西口から徒歩10分。3階建ての大きな施設が「Chus」です。那須の山「茶臼岳(ちゃうすだけ)」から名付けられた建物は、もとは家具屋だった場所をリノベーションしてつくられました。
1階はメイドin那須の買い物が楽しめる「MARCHE(直売所)」と、那須で採れた新鮮な食材を使った食事がいただける「TABLE(ダイニング)」。2階は「YADO(ゲストハウス)」、3階が宿泊者専用のラウンジになっています。
生産者と消費者、地元の人と観光客。「あらゆる背景を持つ人たちが、食を通してつながれるようにしたい」と話すのは、「Chus」代表の宮本吾一さん。
2011年から宮本さんが運営するマルシェイベント『那・須・朝・市』の実店舗としてつくられた「Chus」には、「多くの人に那須の食を楽しんでもらいたい」という宮本さんの思いが込められています。
地産地消の食品から、全国のおいしいものまで集まる「MARCHE(直売所)」
「MARCHE」には、採れたての野菜や果物、チーズにヨーグルトなどの加工品まで、地元の食材がそろいます。毎日、地元農家の方々が新鮮な野菜を届けに来てくれるのだそう。
地産地消の食品以外にも、宮本さん自身で訪ね歩いた全国の生産者さんから取り寄せた品々が置かれています。
宮本さん:「地元以外の食品も取り扱うことで、地域の生産者さんは外から来る観光客とマッチングさせて、地元住民の方には全国の生産者さんを結びつける。その結果『MARCHE』にいろんな人が来やすくなりました」
現在「MARCHE」や「TABLE」は、観光客だけでなく、地元の方も立ち寄るスポットになっているのだそう。
「Chus」と那須にある森林ノ牧場との共同開発で生まれた話題のお菓子「バターのいとこ」をお目当てに来る人も。常時販売している店舗はここだけなので、ぜひチェックしてみてくださいね!
那須の食をもっと楽しんでもらうためのゲストハウス「YADO」
那須の食を買うことができる「MARCHE」と、地元食材を使った料理を提供する「TABLE」を備えた「Chus」。さらに「宿があれば、日帰り観光するよりも食事をとる機会が増え、地域以外の人も行き来しやすくなる」と考えた宮本さんは、2016年にB&Bのゲストハウスを2階にオープン。「訪れる人が那須のおいしいものに出会い、大きな食卓でおいしさを分かち合い、心がつながっていくような場所になってほしい」と語ります。
ゲストハウスの部屋タイプは、全部で5種類
2階のゲストハウスには、8名用の男女共有ドミトリー、ツイン、ダブル、ロフト、和室タイプがあります。
ドミトリーは男女共有ですが、ベッドひとつひとつが個室になっているので、プライベートはきちんと確保。ログハウスのような雰囲気でひとり旅にも使えそう。6名からの貸切り利用も可能です。お値段は1泊3,700円(税別)からとリーズナブル。朝食つきでこのお値段はうれしい……!
そのほか、木のぬくもりを感じるツイン(左上)は友人同士やカップルにぴったり。ダブル(右上)はひとりでゆったり利用したい人にもおすすめです。ロフト(左下)は4名まで利用できるのでグループ旅行に重宝できそう。12畳の広々とした和室(右下)は、家族や小さなお子さま連れの方に。
いずれも部屋着はついていないので、必要な方は要注意。アメニティは1階にて有料販売しています。歯ブラシや基礎化粧品などは、あらかじめ持参するといいかも。
3階は宿泊者専用のラウンジになっています。那須の山々が望めるスペースでゆっくり羽を伸ばせば、旅の疲れも癒されること間違いなし。「Chus」スタッフのおすすめは、「晴れた日の、大きな窓から夕陽が見える眺め」とのこと。
大きな食卓で、メイドin那須の食材をたっぷりと味わう「TABLE」
宿泊時も、日帰り旅のランチやディナーとしても楽しめる1階のダイニング。訪れた人たちが家族のように集って食事ができる大きなテーブルが置かれています。
ここでは、那須野菜を使ったサラダや、那須でつくったチーズの盛り合わせ、とちぎ和牛や那須野ポークなどのお肉料理、那須の米農家さんのご飯など、那須の食材をふんだんに使った料理がいただけます。
朝ごはんは、那須の食材たっぷりのプレート
宿泊者は、こちらのダイニングスペースで朝食をいただきます。
今回いただいた「Chusの朝食」は、黒磯の人気パン屋「KANEL BREAD(カネルブレッド)」のパンの上に、那須高原にある「あまたにチーズ工房」のフレッシュチーズを塗り、那須町のカフェ「Vamos(ヴァーモス)」から仕入れたカカオニブと、バナナを合わせて添えたもの。
那須の野菜の新鮮なサラダは、野菜の味がしっかりしているので、ドレッシングはかけずに塩とオリーブオイルのみで味付けされているそうです。
シャキシャキしたレタスの食感や、酸味が少なく甘さのあるトマトがおいしい! パンにたっぷり塗られたチーズのさっぱりとした味わいも、朝から食が進みます。
ダイニングでいただいた野菜やスイーツは、一部「MARCHE」で購入できるものも。この日は、思わずリピートしたくなる濃厚な味わいの「味恋トマト」を購入。「TABLE」で食べて気になった食材があるときは、「MARCHE」も合わせてチェックすることをお忘れなく。
また、+2,700円(税込)で宿泊者限定ディナー(料理7品)をつけることも可能です。
はじまりは、1軒のハンバーガー屋さん
「Chus」のはじまりは、2005年に宮本さんが立ち上げた那須高原のハンバーガー屋「Hamburger Cafe UNICO(ユニコ)」にあります。
「那須高原は野菜もおいしいし、那須和牛もある。ハンバーガーといっても“ファストフード”ではなく、地産地消で手間暇をかけてつくる“スローフード”のおいしいハンバーガーがあったら面白い。那須の魅力をまるごと味わってもらうこともできるんじゃないか」と、宮本さんは考えました。
いざお店をはじめてみると、仕入先のパンやお肉のつくり手の顔は見えても、市場や産直で買う、野菜のつくり手の背景が見えないことに気づいたのだそう。
宮本さん:「野菜農家さんがどんなつくり方をして、どんな思いでつくっているのかという背景を知らないまま、それまで棚に陳列した野菜を買ってきた。安定した仕入れを得るために、『○○さんの野菜』といった、つくり手の顔や名前のわかる農家さんと取引がしたいと思ったんです」
そこで、農家さんが野菜を直接販売するマルシェを開くことを思いついた宮本さん。当時は「マルシェ」という言葉になじみがなく、手当たり次第、地元の農家さんに出店依頼をしてみるものの、何十軒も断られたのだそう。ようやく集まった10軒ほどの地元農家さんには、トラックの荷台に野菜を積んで来てもらい、ハンバーガー屋の駐車場を開放して売り買いをはじめました。
宮本さん:「採れたての野菜に朝日があたって、キラキラしていた。駐車場に人が集まって会話が生まれて、その小さな光景がとても豊かに感じられました」
日常にマルシェがある「Chus」へ
『那・須・朝・市』と名付けられたマルシェイベントが発足した2011年。東日本大震災が起こり、「地産の野菜を扱うということ自体が悪に変わってしまった」と宮本さんは振り返ります。観光客も地元の人も地域の野菜を避けるなか、やむを得ずマルシェも一旦中止に。
そして1年が経った2012年。地域の事業者たちが集まって話し合いを重ねた結果、「なんとか人が集まる場所をつくりたい」と、マルシェが再開します。
「観光客も地元の人も、消費行為にフタをされていた時期だった。そのストレスから解放されるように多くの人が集まった」と、宮本さんは語ります。
街の後押しもあり、最終的にマルシェには70軒ほどの参加者が集まったのだそう。規模が拡大したマルシェの運営をするのが次第に難しくなってきた頃、宮本さんは、現在の「Chus」の建物になっている空き物件と出会いました。
宮本さん:「野菜農家さんは毎日出荷ができる。食べる側の私たちも、毎日食事はする。それなら、規模を小さくしても、日常的にマルシェがある方がいいなと思ったんです」
それから「Chus」の店づくりがスタート。2014年に、地域の人も、観光客も、地産のものや全国のおいしいものが手に取れる場所となった「Chus」が誕生します。
取材中、食材を届けにやってきた農家さんの話を、買い物に来たお客さんが熱心に聞き入る様子が印象的でした。
黒磯の街を、「裏那須ホテル」に見立てる
「黒磯の街は、一軒のホテルのようだと思っているんです」と話す宮本さん。黒磯の街をつくる店主の方たちとのつながりについてお伺いしました。
宮本さん:「黒磯駅前には『KANEL BREAD』(パン屋)と『Iris Bread & Coffee』(カフェ)がある。そこから少し歩けば小商いの洋服屋さんや家具屋があって、さらに進んでいくとグロサリーや『1988 SHOZO CAFE』(カフェ)がならび、『Dear Forks & Flowers』(花屋)もある。次に『Chus』(宿)があって、最後に『BAR CARAVERA(カラベラ)』と、駅前からバーまでの通りを縦にすると、まるでホテルみたい。僕はこれを、『裏那須ホテル』と呼んでいます」
たしかに、ホテルの1階の入り口にはパン屋やカフェがあり、中層階にブティック、客室と続き、最上階にバーのあるところが多い気がします。
宮本さん:「自分のお店だけが頑張ればいいというわけでなく、ホテル(街)全体が頑張って稼働率が上がれば、みんなが潤う。お店同士が競合するのではなく、街に人が来るような流れをつくった方が結果的には面白くなる。そういう考え方を、この街の人たちは根っこで共有できていると思います」
ホテルの中を探索するような気持ちで、街を歩いてみる。
ゆっくり探索したあとには、この街のことを、もっと好きになるかもしれません。
那須のおいしいものを堪能するだけでなく、街の味わい方まで教わったような気がする、「Chus」で過ごすひとときでした。
Chus(チャウス)
栃木県那須塩原市高砂町6-3
営業時間:10:00-23:00(毎週水曜日 17時CLOSE)
カフェ:12:00-23:00
ランチ:12:00-14:30(L.O.)
バー&テーブル:18:00-22:00(L.O.)
定休日:第2木曜日定休
http://chus-nasu.com/
取材・執筆:田中 未来
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春の特集「もっと知りたい、黒磯 ― あの街に旅する理由」では、地元のお花屋さんと歩く、黒磯のおすすめスポット巡り、話題のお土産「バターのいとこ」をはじめとした黒磯土産のご紹介や黒磯の中心である「1988 CAFE SHOZO(カフェ ショウゾウ)」を取材しています。
ぜひ、あわせてお読みください。
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※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。
※金額など掲載されている情報は記事公開時点のものです。変更されている場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
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