- odekake
- 2019/04/15
目次
黒磯に来たら、カフェ好きに愛される「1988 CAFE SHOZO」へ
自然豊かな街、栃木県那須塩原市の黒磯。東京から東北新幹線に乗って、那須塩原駅まで75分。宇都宮線に乗り換えてひと駅。
近年おしゃれなカフェや雑貨店がならび注目を集めているこの街を旅するなら、必ず訪れたいカフェがあります。
1988年にオープンした「1988 CAFE SHOZO(カフェ ショウゾウ)」。当時シャッター通りとなっていた黒磯商店街の空きアパートからはじまったカフェは、今では全国のカフェ好きが訪れる人気店。黒磯の街に人が集まるきっかけをつくりました。
「誰もが一瞬にして、旅人になれる場所を」。そう願った店主の菊地省三さんのカフェは、あらゆる人を「旅人」として歓迎してくれる居心地のよさがありました。省三さんにうかがった「街と旅」にまつわるお話もお届けします。
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スコーンの焼ける、いい香りに包まれた店内
JR黒磯駅西口から徒歩10分。グレーの2階建ての建物が「1988 CAFE SHOZO」です。ドアを開けると、スコーンの焼けるいい香りが鼻をくすぐります。
お店の1階では、スコーンやクッキーなどの焼き菓子、コーヒー豆や紅茶の茶葉、雑貨類を販売しています。階段を上がって、2階がカフェスペース。
あちこちに散りばめられたインテリア
ひとつひとつテーブルや椅子の異なる内装は、「どこに座ろうかな」と目移りしてしまいそう。落ち着いた雰囲気の木製テーブル席もあれば、マーブル模様をしたレトロモダンな円形テーブル席もあります。色とりどりの椅子から、好きな色を見つけて座ってみるのもよさそう。
窓から入る自然光と橙色の照明が、明るすぎず暗すぎず、大人の隠れ家のような雰囲気。
店内のあちこちに本棚も設置されています。背表紙を見てみると、旅にまつわるタイトルが多い印象。レモンや観葉植物、小さな置物などがいたるところに飾られていて、店内のアクセントになっています。
コーヒーを淹れる様子が間近に見られる
2階の一角には、大きなやかんやコーヒードリッパー、食器が並び、座席からスタッフの方がコーヒーを淹れる姿を見ることができます。
音や香りを間近に楽しみながら、コーヒーとケーキが運ばれてくるのを待つ時間。「わからないことがあれば、なんでも聞いてくださいね」と笑いかけてくれたスタッフの方に癒されます。
「ケーキシエスタ」で、ゆったり過ごすカフェタイム
カフェメニューは、コーヒーに紅茶、ジュースやお酒もあります。
スコーンセットやトーストセットなど小腹を満たせるものをはじめ、ケーキも数種類置いています。
30年間変わらない味のカボチャのプリン、コーヒーに合う濃厚なチーズケーキ、ふわふわのシフォン、ラズベリーソースを使ったオールドショコラに、松の実が香ばしい松の実タルト……季節限定のケーキを置いていることもあるようです。
この日は、「森のブレンドG2」(580円)と、ケーキとスコーンが1つずつついてくるひと皿「ケーキシエスタ」(640円)を注文しました。
コーヒーは、苦味と酸味のバランスがほどよく、クセのない後味で飲みやすい。どんな料理に合わせても楽しめそう。
カボチャのプリンは、苦めのキャラメルソースがかかっていて、口どけなめらかなプリンの甘さとの相性が抜群。プリンに添えられた生クリームは、香りづけにラム酒が使われていて、ほんのりいいにおい。
サクッとした食感のスコーンをかじると、中はしっとり、ふわふわ。思わず頰がゆるんでしまいました。
菊池省三さんに聞いた、旅からはじまった「1988 CAFE SHOZO」のお話
店主の菊地省三さんは、黒磯生まれ黒磯育ち。国内をバイクでひとり旅して、さまざまな土地を見て回りながら、27歳の時にお店を開きます。
ここからは、旅人の目的地になるようなカフェを目指した省三さんに、お店を開くきっかけとなった旅と黒磯の街についてうかがったインタビューをお届けします。
「人生の中で満足感を得るには、自分で何かはじめないと。それならば自分の好きなコーヒーのお店はどうだろう」。いざカフェを開こうと決めたものの、店づくりのノウハウも経験もなかった省三さん。「お店をはじめるには、もっと色んなものを見なくては」と、バイクで日本各地を旅しながらいろいろな街を見て回りました。
旅していた頃の省三さんの好きな時間。それは、旅先でコーヒーを飲んでいる瞬間でした。地元の黒磯でお店をはじめるなら、お客さんにも同じような気持ちになってほしい。
たとえば、“旅先の空の下で飲む一杯のおいしいコーヒー”。
黒磯もいつか、旅人が来る街になったらいいな。そのためには、いろんな人がお店を開いて、通りができてくれるのが一番ありがたい。そんな願いを抱きつつ「1988 CAFE SHOZO」がオープンします。
「どこかに行こう」と思った瞬間から、旅がはじまる
省三さんのお話の中には、「旅人」という言葉が繰り返し登場します。省三さんにとっての旅人とは、どのような意味を持っているのでしょうか。
省三さん:「たとえば、休みの日に何にもやることがなくて、午前中に寝て洗濯だけして終わってしまいそうな日。そんな時、午後からでも『どこかのカフェに行こう』と思った瞬間から、ちょっと気持ちが軽くなる。なんにもないで終わってしまいそうな1日が、『あのお店に行ける』と思った時からすてきな時間に変わる。それが家から10分や20分で行ける場所でも同じ。そう思った瞬間から、小さなひとつの旅が生まれる。『1988 CAFE SHOZO』が、そんな一瞬にして旅人になれる場所になれたらと思っています」
いい街の条件は「色と香りのある街」
旅人が目的地にしてくれるような、いい街の条件を考えたとき。
たとえば自分が旅に出るとき、どうしてその街に行ってみたいと思ったのだろうと考えたら、そこには「色と香りがあった」と省三さんは語ります。
省三さん:「パンを焼いている香りや、コーヒーを焙煎しているにおい、お菓子を焼いている匂いが街に広がっているようなところは、きっといい街だろう。洋服屋やお花屋があれば、街に色がつく。“色と香りがあふれている街”が、自分にとっていい街なのだと気づきました」
あれから30年。黒磯の街は「いい街の条件が少しずつそろいつつあるような気がします」と、省三さんは笑います。
日々変化する街・黒磯
「1988 CAFE SHOZO」のある通りは、街の人から「SHOZO通り」という愛称で呼ばれています。現在、この通りには、雑貨屋に洋服屋、カフェ、花屋など、多くの個性的なお店が連なり、にぎわいを見せています。
黒磯の街が気に入って、東京から移住してきた樋爪克至(ひづめかつし)さんは、カフェの裏手で「DEAR, FOLKS & FLOWERS(ディア フォークス&フラワーズ)」という花屋を営んでいます。
30年間、街を見守り続けてきた省三さんに、ここからは移住者の樋爪さんも交えて、近年の黒磯の変化についてお話を伺いました。
省三さん:「この通りでお店をやっている人は、みんな旅の世界から抜けられない人ばかりだよね。お店をやっていること自体が、旅の途中みたいな」
樋爪さん:「常に何かをしていたいんですよね。お店づくりも30年前と今とでは、すごく変わってきているというか、そのときの気持ちやアイディアとかで、ちょっとずつ街全体が変化してきている。それがあるから、訪れる人が『あの街(黒磯)に行ったら、また変わっているかもしれない、お店が増えているかもしれない』と思ってもらえるのが、僕は楽しいなと思います」
「多様性に対応する街じゃないと、面白くない」
時代と共に変化していく黒磯の街。「いい街の条件」を振り返りながら、「次にできたらいいなと思うお店の話を、省三さんとよくするんです」と樋爪さんは笑います。
省三さん:「いろんなお店があったほうがいいよね。おしゃれなお店ばっかりじゃなくていい。違う店ができてもいい。多様性に対応する街じゃないと、面白くないなぁ」
樋爪さん:「僕たちがいい街にしておくことで、もともと、この街に縁がない人たちが引き寄せられて、ここに根を張っていくといいですね」
省三さん:「お店が増えると、街は面白くなるよね。おそらく、自分がどんな人生を過ごしたいかを一生懸命考える人が、自分のお店を持つ。それで人を喜ばせられたら、自分が幸せになれる。充実感って、人を幸せにした時しか生まれてこないからね。その結果、お客さまが喜んでくれる。そういう人種がたくさんいるのでこの街が熱い」
街のライブ感が黒磯の財産
カフェを開くと決めた当初は歴史のある街がよかったと思っていた省三さん。それでもやっぱり地元が好きだったから、最終的に地元でお店を開くことに決めたのだそう。
省三さん:「黒磯自体の街のパワーはあまりないし、文化的な背景もない。小さなこの街にあるのは、今、お店をやっている人たちのパワー。今現在のライブ感がこの街の財産です」
最後に、黒磯の魅力について省三さんに尋ねてみると、すてきなエピソードを語ってくれました。
省三さん:「30年前に友だちと日本地図を広げて、元気なところが赤くなるような地図があったら、黒磯の部分が一番真っ赤にするようにしたいねという話をしていたんです。今は地図を広げたら、赤いところのひとつに間違いなく黒磯が入ってくれると思う。30年前にした会話が、今、実っています」
わたしの住んでいる街は、赤くなるかな?
そういえば、街の香りや、色を意識したことは、これまでにあったかな。
黒磯の街を歩いていると、いつしか忘れがちだった、五感で旅をする気持ちがよみがえってきます。
SHOZOのコーヒーを東京でも味わえる
「1988 CAFE SHOZO」のほかにも、那須高原の自然に囲まれた場所には、「NASU SHOZO CAFE」があります。こちらのカフェでは、開放的なテラスでコーヒーをいただくことができるのだとか。
さらに、東京・青山では、SHOZOのコーヒーといっしょに、スコーンやパウンドケーキが楽しめる「SHOZO COFFEE STORE COMMUNE 2nd」や「SHOZO COFFEE 北青山店」が展開。
黒磯の旅で堪能した味を、都内でもいただくことができます。東京でものんびりとした黒磯の空気感を味わえるかも。
「1988 CAFE SHOZO」や、「1988 CAFE SHOZO」をとりまく黒磯のお店を訪れて、街の香りや色をたっぷりと感じた今回の旅。自分のペースでゆったり過ごせるこの街で、心と身体も軽くなった気がしました。
今度は友人を誘って、この街のコーヒーを飲みに行こう。
そう心に決めて、街を後にしました。
1988 CAFE SHOZO
栃木県那須塩原市高砂町6-6
営業時間:11:00-19:30(2階のCAFEは19:00 L.O.)
定休日:不定休(公式サイトにて要確認)
http://www.shozo.co.jp
取材・執筆:田中 未来
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※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。
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