- odekake
- 2019/10/24
子どもから大人まで幅広い世代から愛される“真ん中”のおやつ、「たいやき」。肌寒い季節に街で見かけると、ついつい買いたくなってしまいますよね。
そんな昔からある定番のたいやきに、形は変えずとも東京のたいやき屋さんの新しいスタンダードとなりそうなお店が学芸大学にありました。
SNSから若い世代を中心に広まり、昔ながらのたいやきにこれまでとは違った風を吹かせる「目黒ひいらぎ」。長く続いてきたたいやきの伝統と現代のスタイルが混ざり合う、新しいたいやきの魅力を探しに出かけてみましょう。
目次
東京発の新しいたいやき屋「目黒ひいらぎ」
学芸学芸大学駅から歩いて約4分ほどの場所にある「目黒ひいらぎ」。恵比寿の人気店「恵比寿たいやきひいらぎ」の味と製法を引き継いだ分店として、2011年にオープンしました。
駅を出たら、人で賑わう西口商店街へ。お店を通り過ぎて路地に入ると、白いのれんが目印です。
たいやき屋さんというと、昔ながらのレトロな店構えを思い浮かべるかもしれません。「目黒ひいらぎ」はそのイメージとは一味違う、まるでスタイリッシュなティースタンドのように見えます。
ふらっと誰もが立ち寄りやすい入口からお店の中に一歩入ってみると、白を基調としたコンパクトな空間。陳列棚にはブロック塀が使われていたり店内に盆栽が置いてあったりと、シンプルさのなかにエッジが効いていて、内装にこだわりを感じますね。
シンプルだからこそ奥深い、長く続いてきたたいやきのつくり方
たいやきには「天然もの」と「養殖もの」の2種類があるのを知っていますか?
一匹ずつ焼いていくたいやきは「天然もの」、一度にまとまった数を焼くタイプは「養殖もの」に区別されています。ここ「目黒ひいらぎ」のたいやきは、「養殖もの」です。
あんこと皮でつくられているシンプルなお菓子だからこそ、たいやきの食感や味わいはお店ごとに変わるもの。「目黒ひいらぎ」のたいやきは皮の食感を出すために、生地には数種類の小麦粉や砂糖などを独自に配合しています。北海道産の小豆を使ったあんこは、気温と湿度によって炊き方を調整しているそう。
まさにシンプルだからこそごまかしが効かない、奥深いお菓子なんだなと実感しました。
サクッと音を立てる、こんがりとした焼き色が食欲をそそるたいやき
焼きたてのたいやきを手渡されると、手のひらにじんわりと熱が伝わってきます。こんがりと焼き上げられた皮の美しい焼き色に惹かれ、もう食べるのが待ちきれない……!
一口食べてみると、口の中に入れた瞬間サクっと音が聞こえる皮の食感にびっくり! パリっとした食感の皮となめらかなあんことの相性がたまりません。上品な甘さなので、しつこさを感じずにペロリと食べられます。
思わず発見したかわいいチャームポイント。たいやきのシルエットをなぞるようにはみ出たあんこは、あんこがたいやきの端までみっちり詰まっている証拠です。
「目黒ひいらぎ」のおいしさの秘訣は、時間をかけて焼き上げること
「目黒ひいらぎ」のたいやきは、なんと30分以上もの時間をかけて焼いているそう。お店によっては5分以内に焼き上げるところもあるようで、この長さはたいやき屋の中でも特徴的です。
じっくりと時間をかけて焼き上げることで、サクッとした香ばしい皮に仕上がるんですね。
そしてたいやきの要ともいえるあんこは、一度に炊いて一晩寝かせてから使います。
「目黒ひいらぎ」店長の野中聖之 (のなか まさゆき)さんに理由を聞いてみると、一晩寝かせたほうが味がなじみ、水分が飛びにくいのだとか。
野中さん:「あんこ一本勝負しているので、妥協せずに職人仕事としての意識を持ってつくるようにしています」
どこか懐かしい気持ちにさせる、たいやきの魅力
野中さんが思うたいやきの魅力とはなんでしょうか。
野中さん:「みんなが知っていること。おそらくたいやきの歴史って100年越えると思うのですが、あまり形を変えずにずっと続いていることに魅力があって、どこか懐かしい。世代を超えて継承していきたいなと思いますね」
身近にあって買いやすいおやつでありながらも、丁寧な手仕事でつくられたつくり手の温度が伝わるたいやき。日本で昔から継承されてきた理由がわかる気がしました。
秋の季節限定メニュー「おはぎ」をおうちでゆっくり味わう
「目黒ひいらぎ」では、たいやきをメインとすることは変えずに、季節に合わせたお菓子をサイドメニューとして提案しています。
春と秋はおはぎ、夏はかき氷、冬はきんつばが並び、季節ごとにその味を求めるファンもいるのだとか。
今回いただいたのは、味のバリエーションが楽しい春と秋の季節商品「おはぎ」。味は「粒あん」「きな粉」「すりごま」の3種類があり、あんこはたいやきに使うものをおはぎ用に少し調整しているそうです。
ゆっくりおはぎを味わいたかったので、家に持ち帰ることにしました。
どのおはぎももっちりとしつつもお米の粒感を感じることができ、お腹も大満足の一品。
「きな粉」は香ばしくあんこの程よい甘さが相性ばつぐん、「すりごま」はごまの風味豊かでシャキシャキとした食感と舌ざわりがおいしく、あっという間に食べ終わってしまいました。
とっておきのひとつもいいけれど、食べ比べを楽しむのもおすすめです。
ぜひ、おはぎと相性のいいあたたかいお茶を飲みながら味わってみてくださいね。
たいやきを広い世代に向けて、今の時代に合わせ継承していく
もともとはたいやきにこだわらず、自分のお店を持ちたいと思っていたという野中さん。最初は和菓子のことを分からなかったけれど、「恵比寿たいやきひいらぎ」で仕事をしていくにつれてたいやきの魅力に気づいたことが、分店をオープンするきっかけになったといいます。
野中さん:「いわゆる昔からある街のたいやき屋さんとはちょっと違う、同世代の若い世代のひとたちにも来てもらえるようなお店にしたいんです。ずっと昔から継承されてきたたいやきの文化を大切にしながら、店構えやデザインを今の時代に合わせています」
「目黒ひいらぎ」のロゴを含め、お店のデザインは野中さんご自身で考えたそう。デザインの経験はなかったものの、好きでつくってみたいの気持ちから手がけられたそうです。外観から内装まで雰囲気がすてきに統一されているのも頷けます。
普段「目黒ひいらぎ」に来るお客さんは、地元の方やリピーターがほとんど。最近の夏はかき氷を求めて若い世代のお客さんが多く訪れるようになったそうです。
野中さん:「学芸大学はもともとあまり外から人が来る街じゃないのですが、わざわざ電車に乗って来てくれた方が増えてきた印象です」
たしかにSNSでお店の名前を検索すると、お店の外観や商品を撮った写真がずらりと出てきます。
歴史が長い老舗から始まり、SNSをきっかけに若い世代の方が多く訪れるお店など、今となってはたいやき屋さんの形もさまざま。商店街の近くにあり、地元密着のイメージがある「目黒ひいらぎ」も、今後は表立った場所での出店も考えているそうです。
姿形は変えずとも世代を超えて継承されてきたたいやきが、これからどんな形で伝えられていくのかな。新しいたいやきが広がっていく予感を胸に、お店を離れました。
どこかほっとする賑やかな街、学芸大学
お店近くの西口商店街が夕日で染まるころ、商店街には学校帰りの学生さんや、買い物をするご年配の方、サラリーマンの方などで賑わいをみせていました。
野中さん:「ずっと昔から商店街に根付いているお店もあれば、今流行っているようなお店が次々できたりもする。昔からのものと今のものが混在する街なのかなと思いますね。いつも活気があるのでそこがおもしろいなと思います」
野中さんの言葉どおり、商店街には昔ながらのおせんべい屋さんや、かわいい手づくりドーナツ屋さんなどさまざまなお店が並んでいました。
「目黒ひいらぎ」から少し足を伸ばせば「碑文谷公園(ひもんやこうえん)」という大きな公園もあり、たいやきを買ってこちらのベンチでゆっくり食べるのもおすすめです。
落ち着いた雰囲気がありつつも、人の話し声が行き交って、たくさんのお店が並んでいて。ここで日常を営む人々のたしかなぬくもりを感じられるこの街は、なんだかあたたかい。「またここに遊びにきたいな」、学芸大学はそう思わせてくれる街でした。
ひとりで自由きままにお店を見て回ったり、友だちや恋人と商店街グルメを楽しんだり。
肌寒くなりあたたかいものが恋しくなる季節、「目黒ひいらぎ」のたいやきをきっかけに学芸大学を街歩きしに訪れてみませんか?
目黒ひいらぎ
東京都目黒区鷹番3-18-3
TEL:03-6412-7945
営業時間:10:00-19:00 ※完売次第終了
定休日:年末年始
http://www.meguro-hiiragi.com
取材・執筆:江口 夏海
編集:菊池 百合子
※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。
※金額など掲載されている情報は記事公開時点のものです。変更されている場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
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