- odekake
- 2019/09/09
おにぎり専門店として、多くのファンが訪れる大塚の「ぼんご」。新潟県岩船産のお米と、有明産の海苔を使ったおにぎりは、一度食べたら忘れられない味わいです。
55種類もある豊富なメニューへのこだわりや、老若男女に愛される店主や従業員のみなさんの佇まいまで、「ぼんご」の人気の理由を濃縮してお届けします。
目次
おにぎり専門店「ぼんご」があるのは、下町風情の残る大塚の街
「 ぼんご」のある大塚は、駅前こそビルに囲まれているけれど、のどかな雰囲気が漂う街。
JR山手線の大塚駅を降りるとすぐそばには都電が走り、隣が池袋という繁華街であることを忘れるくらい、穏やかな街の空気を感じます。
メディアでたびたび紹介される人気のおにぎり専門店ですが、大塚の地で長く愛される理由を、2代目として「ぼんご」を率いる右近由美子さんはこう話します。
右近さん:「大塚ってすごく住みやすくて、山手線沿線にありながら下町風情のある街なんですよ。常連のお客さんは温かく見守ってくれて、育ててくれる。そういうところでやれているから、今まで残っていられているんです」
「ぼんご」は、昭和35年12月にオープンして、今年で59年目を迎える老舗のおにぎり専門店。
親子で通う人も多く、赤ちゃんの頃から成長を見守ってきた子どもといっしょに、夏休みの自由研究の宿題でおにぎりを握ったのが最近の楽しかったこと、と右近さんは語ります。
「ぼんご」に55種類もの豊富なメニューがある理由
1日で1俵(60kg)のお米がおにぎりになる「ぼんご」。他のおにぎり専門店と一線を画す特徴は、大きさ・握りたてを味わえること・そして具材のボリューム。
でも、それだけではありません。なんと、おにぎりは55種類ものラインナップ!
おにぎり専門店とはいえ、ここまで豊富なメニューはなかなか見つからないのではないでしょうか。
右近さん:「私がはじめて『ぼんご』に来た頃は、20種類くらいでした。定番のしゃけ、こぶ、たらこ、うめから、めずらしいところで納豆、たくあんキムチ。普通のおにぎり屋さんと変わらないメニューだったんですよ」
「ぼんご」の創業者であり、7、8年前に亡くなった右近さんの夫の祐(たすく)さんは、食通でいろんな場所へ情報収集に出かけていたんだそうです。
右近さん:「『明日から明太子始めるから!』ってわたしに言うんですよ。「つくり方知らないんですけど……」って(苦笑)。それから少しずつメニューが増えて。わたしが握るようになってから、お客さんがないしょでマヨネーズ入れて」と頼んでくるんです。「ないしょだよ、今日だけだよ」って。で、おいしいから次来た時も「やって」って言われちゃう(笑)。そんなのが続いてたから、もうメニューにしちゃおうって」
人は選択肢があればあるほど、決められなくなるとはよく言ったものです。55種類もあるうえに、トッピングの組み合わせで、味のバリエーションは無限に広がります。
右近さん、メニュー決めるの悩んじゃいますよ……!
卵黄にクリームチーズも!「ぼんご」人気メニューとおすすめトッピング
「ぼんご」の壁にはおすすめのトッピングや人気メニューリストがずらり。
ダントツ人気はやっぱり定番のしゃけなのだそう。「若いお客さんの発想っておもしろいんですよ!」と話す右近さんは、トッピングのおすすめにも熱が入ります。
右近さん:「人気のトッピングはすじこシャケ・卵黄そぼろ・明太クリームチーズですね」
さっそく「すじこ&クリームチーズ(税込650円)」と「卵黄&肉そぼろ(税込400円)」をいただくことに。
右近さんは最近クリームチーズにはまっているそうで、塩辛などしょっぱいものがマイルドになるのが好みなのだそう。根強い人気で復活したという、すじこにトッピングを試してみました。
卵黄は3年ほど前から登場したメニュー。冷凍した卵黄を醤油に漬け込んだ、食欲をそそる一品。あったかいごはんにのせると、とろりととけるのがたまらないそうですよ。
「ぼんご」のおにぎりができあがる様子、じっくり見てきました!
今回は特別にカウンターの中へ入らせていただきました!
お米と具材は、基本的に2:1にしているそうです。それは、おにぎりと具材をいっしょに味わってほしいという思いから。
おどろくのはまだ早かった……!大きな具材を覆い隠すように、釜からお米をどーんとのせます。
ここまでの工程、30秒かかってないくらいのでは?と思うほどの早ワザ。
大きな具材はみるみるうちににお米にサンドされてしまいました。
海苔でふんわりと包み込んで、仕上げにてっぺんにも具材をぎゅっとのせます。
ふつうのおにぎりだったら、上に乗っている具材くらいの量が中に入ってると思うのですが、食べ進めると、ぎっしり最後までお米と具材を味わえるほどのボリューム。わたしの中で、おにぎりの概念が崩れました……!
「具材が多いので、すぐに崩れそうになっちゃうんですよ」と右近さん。具材を優しく包み込んだふっくらしたおにぎりは、ほろほろとお米一粒一粒が際立っています。こんなにおいしいおにぎりって、あったんだ……!
新しさを否定せず、チャレンジしていく姿勢
豊富なトッピングの組み合わせは、若いお客さまが増えたこときっかけ。
右近さん:「お客さんの考え出す力がすごいんですよ。『そんなの大丈夫ですか?』って思う注文が来たりして。中にはトッピング3つも注文する方も。おにぎりも大きくなっちゃうのでつくりづらいんですけど、喜んでもらえるからやっていますね」
想像を超えるチョイスがあった時は、お客さまが帰った後に試食することもあるそう。卵黄そぼろは「すきやきに卵入れるでしょ?」というお客さまの一言で納得したそうです。
新しいものを否定せず、まずやってみる。そして取り入れる。柔軟な右近さんの姿勢が幅広いメニューが生まれた理由です。
こだわるけど、こだわらない。「ぼんご」のおにぎりを形づくる食材
「ぼんご」のおにぎりに使われる食材は、右近さんの遠い親戚のお米屋さんから仕入れる、新潟岩船産のコシヒカリ。
山形と新潟の県境にある女川という、水のきれいなところにある段々畑で栽培されていて、生産量も少ない貴重な米だそうです。
寒い地域なので、新米が店へ並ぶのは10月10日ごろから。毎年新米を楽しみにするお客さまは、具材なしのおにぎりを食べる方も増えるそうです。
有明産の海苔は、開店当初から付き合いのある海苔問屋さんから、「ぼんご」のおにぎりに合う質のいい海苔を選んでいます。
そして、塩は沖縄のもの。新しく塩を変えるか検討していた時に、たまたま訪れた常連さんの反応を見て、すぐに変えることを決めたそうです。
ひとつひとつの食材へのこだわりは強いものの、あくまで今はこれが一番だから、とのこと。さらに良いものがあれば変えるのもいとわないという言葉に、「ぼんご」のおにぎりへの信念がうかがえます。
また、豊富な具材は、ひとつひとつ手を加えて、おにぎりに合うように日々仕込みを続けています。
「55種類と謳っている以上、欠品させないことがポリシーですね」とお話しする右近さん。従業員同士で声をかけ合って、なくなる前に下ごしらえしておくよう努めているそうです。
「大きくて、あったかく、具が大きい」が特徴の「ぼんご」のおにぎり。60年近く続くおにぎりの味わいは、伝統の味を守りつつ進化を続けます。
次のページでは、「ぼんご」の歴史や、右近さんの半生についてたっぷりご紹介します。
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