- odekake
- 2019/08/29
暑い季節や体が疲れたときには、スパイス料理が食べたくなりますね。
東京・押上で独創的なスパイス料理を提供しているお店が「スパイスカフェ」。
こちらで「ほかにはない、新しいスパイス料理を発信する」というコンセプトのもと、コースディナーのメインに選ばれたのが「ビリヤニ」というお料理です。ビリヤニとはスパイスとインドの細長いお米を使った炊き込みごはんのこと。
インドやパキスタンなど現地で食べられるものとは一味違った「日本の旬を閉じ込めたビリヤニ」が味わえると聞いて、さっそくお店に足を運んでみました。
目次
- 1 押上駅から徒歩15分。スパイス料理専門店の「スパイスカフェ」
- 2 木のぬくもりを感じる、しっとりと落ち着く古民家カフェ
- 3 48ヶ国の旅で出合ったスパイス料理を発信したい。オーナーシェフ伊藤一城さんの決意
- 4 押上の街歩きや古民家の雰囲気も楽しんでほしい。店名「スパイスカフェ」の由来
- 5 メニューは月替わりのコースディナーと平日限定カレーランチ
- 6 スパイス料理を味わい尽くす「7つのお皿」とペアリングドリンクのディナー
- 7 ディナーのメインは日本の旬の食材を活かした「ビリヤニ」
- 8 混ぜておいしい!味の組み合わせを楽しむビリヤニの食べ方
- 9 メニューに合わせて選び抜かれたペアリングドリンク
- 10 平日限定ランチは「スパイスカフェ」とっておきのカレー
- 11 スパイスのとりこになったらおみやげに。人気の「ラッサムカレー」も販売
- 12 目指すはミシュラン。スパイスの新たな魅力を生み出すお店
押上駅から徒歩15分。スパイス料理専門店の「スパイスカフェ」
押上駅B3出口から、スカイツリーを背にして歩くこと15分。緑が生い茂る一角が見えてきます。
細長い小道を奥へ進むと、かわいらしい木製のドアを発見。まるでひみつの隠れ家みたい……!そっと扉を開けたら、「こんにちは」と優しくお店の方が迎えてくれました。
木のぬくもりを感じる、しっとりと落ち着く古民家カフェ
古民家を自分たちの手で改装したという店内は、木でつくられた昔ながらの空気がたっぷり。
店内にはテーブル席とソファ席があります。テーブルとイスはすべて手づくり。少しごつごつとした、いびつな木の手ざわりが趣ある古民家の雰囲気をより味わい深くしています。
少し暗めの照明で、大きな窓から見えるお庭の緑が映えます。しっとりとした落ち着いた雰囲気が漂い、自然と気持ちもおだやかに。
テーブル席から見えるキッチンから、お店じゅうに漂うスパイスの香り。「一体どんなお料理が出てくるのだろう?」と、キッチンを眺めていても楽しめます。
48ヶ国の旅で出合ったスパイス料理を発信したい。オーナーシェフ伊藤一城さんの決意
迎えてくれたのは、オーナーシェフの伊藤一城(いとう かずしろ)さん。
伊藤さんは会社員として働いていた27歳のある日、「世界中の人と会って、 いろいろな国の食べ物を食べたい」という思いから会社を辞め、約3年半、48ヶ国世界一周の旅に出ました。
インドやアフリカ、南米などでその土地ならではのスパイス料理に出合い「日本ではまだまだ知られていない、スパイス料理の魅力を発信したい」と決心。飲食業界未経験でありながら、自分のお店を開くことを目標に帰国しました。
その後、料理人になるためにイタリアンレストラン、インド料理店などで修行を積み、2003年に生まれ育った下町・押上の一角に念願の「スパイスカフェ」をオープンさせたのです。
オープン当時はまだスカイツリーもなく、駅から少し離れたこの場所にどうしたらお客さまが足を運んでくれるか。
伊藤さんの頭に浮かんだのは旅先で見てきた世界中のカフェの風景でした。
押上の街歩きや古民家の雰囲気も楽しんでほしい。店名「スパイスカフェ」の由来
伊藤さん:「カフェは食べ物だけでなく、お店の雰囲気やイベントごとなど、多方面から楽しめるイメージがありました」
そこで、古民家のリノベ―ション空間や押上の街歩きなど、「お店に来てもらうこと自体を楽しんでもらえるように」という想いから店名に「カフェ」と付けることにしたのだそうです。
メニューは月替わりのコースディナーと平日限定カレーランチ
「スパイスカフェ」は水曜〜金曜日限定のカレーランチと、水曜〜日曜日のコースディナーのみ。
ランチは5〜7種類ほどのカレーの中から、1種類または2種類を選べます。予約不可なのでお早めに。
コースディナーは完全予約制。季節の食材に合わせた月替わりの「Spice Tasting Menu スパイスを楽しむ7つのお皿(税込5400円)」と、希望によってワインかお茶のペアリングドリンクのセット(ワイン5種:税込4320円、お茶5種:税込3456円)が味わえます。
スパイス料理を味わい尽くす「7つのお皿」とペアリングドリンクのディナー
「スパイスカフェ」のこだわりをより深く知ることができるコースディナー。
もともとは前菜やデザート、カレーの種類が選べる、カレーがメインのディナーを提供していましたが、3年ほど前から現在の完全おまかせコースに変えたのだそう。
伊藤さん:「まだ誰もやっていないスパイス料理をつくり、世界に発信したいという想いが強くなって始めたのが今の完全予約制のコースディナーです」
コースは「季節の野菜盛り合わせと自家製パン」、「前菜と揚げパン」、「お肉と薄焼パン」、「旬の食材を使ったビリヤニとピクルス」、「カレー2種」、「デザート」の7皿。それぞれの食材は季節に応じて月ごとに変わります。
過去のメニューには温泉卵とナスを下に敷いたしゃぶしゃぶや、グリーンピースのカレーなど、日本の旬の食材を使ったここでしか食べられない味ばかり。
前菜からデザートまですべてにスパイスを絡ませたオリジナルメニューは、まるで魔法のような7皿。食べ終える頃には、すっかり「スパイスカフェ」のとりこです。
最近では「日本の最新のスパイス料理を食べてみたい」とインドの有名シェフがわざわざ来店されたり、毎月ディナーメニューが変わるたびに来てくださるお客さまもいらっしゃるのだとか。
ディナーのメインは日本の旬の食材を活かした「ビリヤニ」
コース料理のメインは「ビリヤニ 」。
一口にビリヤニと言っても、つくる地域や人によってそのレシピはさまざま。
本場のビリヤニは大人数集まったときに食べるおもてなし料理で、使われる具材も、チキン、ラム、エビ、マトンなどを合わせるのがスタンダード。
一方で「スパイスカフェ」流ビリヤニは、現地とは少し違ったスタイルなのだとか。
伊藤さん:「本来は大きなお鍋で大量につくるのですが、スパイスカフェでは炊きたてのビリヤニを味わっていただきたいので、お客様ごとに小さなストウブ鍋で炊いてお出ししています。日本の釜飯のような感覚で、ぜひ炊きたての味と香りをお楽しみください」
さっそく、炊きたてのビリヤニをいただいてみます。どんな味かわくわく……!
フタを開けると、ふわっと何種類ものスパイスの香りが広がります。
取材で伺った8月のビリヤニは「とうもろこしのビリヤニ」。隙間なく敷きつめられた鮮やかなとうもろこしは、まさに旬そのもの。
使われているスパイスは8種類。どことなくチャイの香りと似ているなと思ったら、チャイにもよく使われるシナモン、クローブ、カルダモンをはじめ、ニゲラ、ココナッツオイル、ココナッツファイン、フェンネル、ターメリックがブレンドされているのだとか。
「スパイス料理」といえど辛さはまったくなく、とうもろこしの甘さと、スパイスの豊かな香りが絶妙にマッチ。8種類ものスパイスが入っているのに不思議ととうもろこしの甘さが引き立つやさしい味でした。
インドの細長いお米・バスマティライスがさらりとしているので、ぱくぱくと食べ進められます。
さまざまなスパイス料理がある中で、なぜビリヤニをメインにしようと思ったのでしょうか。
伊藤さん:「お店では、10年ほど前にビリヤニの研修を受けたことをきっかけに、コース料理がない頃から提供してたんです。旬の食材とも合わせられて、新しい組み合わせのスパイス料理がつくれると思い、ディナーコースのメインに決めました」
これまで提供されてきたビリヤニを伺うと、鮎、金目鯛、タケノコ、釜揚げしらすなど、一般的なビリヤニとは違う日本の旬の食材がずらり。
伊藤さん:「日本の四季をいかしたビリヤニをつくりたいと思ったんです。メインの食材をまず決めて、それに合うレシピを考えていきます」
ポイントは、意外にもスパイスを使いすぎないことなのだとか。
伊藤さん:「ほんの少しの差でスパイスが素材の味を消えてしまうことがあります。うちはスパイスを入れることによって食材が引き立つ、新しい味の表現方法を常に意識していますね」
混ぜておいしい!味の組み合わせを楽しむビリヤニの食べ方
ここでビリヤニをさらにおいしく食べる楽しみ方について伺ってみました。
伊藤さん:「そのまま食べてももちろんおいしいですが、ピクルスやカレー、おかずと合わせて食べるのがおすすめですよ。色んな味の組み合わせを楽しむのが、ビリヤニの魅力のひとつなんです」
さっそく、付け合わせの「えのきのピクルス」と混ぜて食べてみることに。マスタードや生姜、シェリービネガーなどのスパイスが効いたピクルスの酸味が加わって、また違ったおいしさが口に広がります。
メニューに合わせて選び抜かれたペアリングドリンク
希望によってお料理といっしょに味わえる「ペアリングドリンク」にも並々ならぬこだわりが。
ペアリングドリンクはワインかお茶のどちらかを選べ、それぞれコースメニューの前菜からデザートに合わせて5種類が提供されます。
伊藤さん:「1皿1皿のメニューに対してなぜこのワインやお茶を選んだのか、すべて理由があります。その時の食材に対してどうマリアージュするのか、そういったお話を聞くのを楽しみに来られるワイン好きなお客さまもいらっしゃいますね。
お茶は中国茶の先生と相談しながら、それぞれ発酵度の違うベストなお茶を合わせているんですよ」
とうもろこしのビリヤニに合わせて選ばれたのは「ミカ・ナチュール」というポルトガル・ミーニョ産のワインです。うまみがしっかりあり、グレープフルーツのような苦味が特徴。酸味と塩味がビリヤニのとうもろこしの甘さとよく合って、するすると飲み進められるのだそう。
平日限定ランチは「スパイスカフェ」とっておきのカレー
ファンも多い人気のカレーを気軽に味わえる平日のランチは予約不要。 季節によって変わる5〜7種類のカレーをラインナップしています。
カレー1種(税込1100円)、カレー2種(税込1400円)ともに、副菜4種、ライス、デザート、ドリンクも付く大満足の内容。
気軽に楽しめて、地元の方や主婦の方などもよくいらっしゃるのだとか。
スパイスのとりこになったらおみやげに。人気の「ラッサムカレー」も販売
お店の入り口には、レトルトカレーからスパイスセットまで、たくさんのオリジナル商品が並んでいます。
「ラッサムレトルトカレー(税込540円)」や「アーユルヴェーダのボタニカル&スパイスティ(税込680円)」など。「ビリヤニキット(税込1620円)」なんてものもあるので、自宅でも「スパイスカフェ」の味をつくることができます。
目指すはミシュラン。スパイスの新たな魅力を生み出すお店
伊藤さん:「これからも、誰もやっていないスパイス料理をつくり、世界に発信していきたいですね」
その言葉どおり、「お米とスパイスってこんなに自然と合うんだ!」「とうもろこしの甘さとワインの苦味が絶妙」
そんな新しい発見が「スパイスカフェ」ではたくさんありました。
伊藤さん:「ゆくゆくはミシュランの星も取りたいと思っています。長期的には地方に新しいお店をつくって、スパイス料理とアーユルヴェーダの考え方を取り入れた生活が体験できる宿泊施設もつくってみたいんです」
実は「スパイスカフェ」は2016年の『ミシュランガイド東京』にて、「ビブグルマン」という評価を受賞しています。
「ビブグルマン」とはコストパフォーマンスが高く、調査員たちがおすすめしたいレストランに付けられる評価のこと。
名実ともに一流の味を目指す伊藤さんの挑戦は、まだまだ続きます。
スパイスの奥深さと化学変化を楽しむ「スパイスカフェ」。ひっそりとした空気といろんな香りが混じり合う空間で、今度はどんな魔法にかけられるのかな。
スパイスカフェ(SPICE CAFE)
東京都墨田区文花1-6-10
TEL:03-3613-4020
営業時間:
[平日ランチ・予約不可]<水-金>11:30-15:00 (14:00 L.O.)
[コースディナー・予約制]<水-金>18:00-23:00 (20:30 L.O.)<土・日>17:00-23:00(20:30 L.O.)
定休日:月火
http://spicecafe.jp/
取材・執筆:てい えみ
編集:ふくい
※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。
※金額など掲載されている情報は記事公開時点のものです。変更されている場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
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