- odekake
- 2019/07/05
目次
タコスランチが似合う夏には、馬喰町「北出食堂」へ
世界中の食文化が集まる街・東京。タイ料理やベトナム料理に続くブームになるかも? と言われているのがメキシコ料理です。特に人気なのが、トルティーヤに肉や野菜などを挟んで食べる「タコス」。
今回ご紹介する「北出食堂(キタデショクドウ)」は、本格的なメキシコ料理のテイストと、日本ならではの食材を組み合わせたタコスが食べられるお店です。場所は、JR総武線の馬喰町駅から徒歩5分、神田金物通り沿い。日比谷線の小伝馬町駅、岩本町駅から歩いても、5分程度で到着します。
ブルックリンで暮らしていた頃にメキシカンタコスに出会い、それがきっかけで「北出食堂」をオープンしたという店主の北出さんに、夏のパワーチャージにもぴったりなタコスランチメニューや、国産食材へのこだわり、メニュー開発秘話などについて伺いました。
下町に吹くブルックリンの風。古い倉庫をリノベーションした「北出食堂」
近年、日本橋や銀座を散策する際の拠点として、外国人観光客向けのホステルが増えている馬喰町。古い建物をリノベーションしたカフェやギャラリー、雑貨店も多く、アート好きからの注目度も高いエリアです。
タコスが大好きで何軒も食べ歩いているという知人から教えてもらった「北出食堂」も、築50年以上の倉庫をリノベーションしたお店。扉を開けると、吹き抜けになった高い天井と、居心地のよさそうな中二階が目に入りました。
「テーブルや椅子は古民家の廃材を利用して手づくりし、壁の塗り直しや内装も、ほとんど自分たちで手がけました。僕が好きだったブルックリンにあるお店も、すべてDIYでつくられていましたから。全体の仕上げは、ブルックリンで知り合ったアンティーク塗装の専門家にお願いしています」
そう教えてくれたのは、店主の北出さん。
20代でアメリカに渡った北出さんは、ブルックリンのレストランで修行し、現地でお店を開こうとしていましたが、結婚を期に帰国を決意。帰国してわずか半年後の2013年12月に「北出食堂」をオープンしました。
グルテンフリーでヘルシー。厨房で焼き上げるコーントルティーヤ
タコスといえば、油で揚げたパリパリの皮にチーズやレタス、ひき肉を挟んで……というイメージだったわたし。「北出食堂」のトルティーヤ(タコスの皮)は、トウモロコシ粉100%のやわらかいトルティーヤです。
北出さん:「メキシコ料理のタコスはやわらかいコーントルティーヤが主流。コーントルティーヤは、グルテンフリーでヘルシーなことでも注目されています。パリパリのハードシェルタコスは、Tex-Mexと呼ばれるメキシコ風アメリカ料理で主流のものなんですよ。僕も、ブルックリンでメキシカンタコスに出会うまでは、ハードシェルのタコスしか知りませんでした」
「北出食堂」では、コーントルティーヤを1枚1枚、厨房で焼き上げているのだそう。今回、特別に厨房の中に入らせていただきました!
北出さんがトルティーヤ生地を取り出すと、それだけで漂うコーンの香り。プレス機で薄く伸ばした生地を鉄板の上に乗せ、焼き上げていくと、甘い匂いがさらに香ばしく立ちます。
北出さん:「焼き立てのコーントルティーヤには水分多く残っていて、パンのようなふかふかした食感です。はじめて食べたときには、あまりのおいしさにびっくりしましたね」
日本の食材を取り入れた「北出食堂」オリジナルのタコス
本格メキシカンスタイルのタコスに魅せられた北出さん。それでも、日本でタコスをつくるのなら、メキシカンスタイルをそのまま持ってくるだけでは意味がないと考えました。
北出さん:「タコスは、メキシコ人にとっての国民食。それでいて、とても懐が深いんです。メキシコ人の友人に『具材は何でもいいんだ。トルティーヤに何かを挟めば、それだけで立派なタコスだよ』と言ってもらえたことで、日本の食材を取り入れた『北出食堂オリジナルのタコス』をつくりたいと思うようになりました」
ディナータイムと土日祝日のランチタイムに注文できるタコスの種類はなんと16種類。具材は、山形県産の米沢ポークをはじめ、良質な国産食材にこだわっています。珍しいシメサバのタコスや、マグロステーキのタコスも好評なのだそう。
また、平日ランチタイム限定の「日替わりタコスプレート」も人気。こちらは日によって、チキンもしくはポークのタコスが提供されます。
平日ランチタイム限定。「日替わりタコスプレート」は野菜たっぷり
ボリューム満点。女性にも人気の「日替わりタコスプレート」
この日の「日替わりタコスプレート(1200円)」の、メインはチキンのタコス。燻製したチリとトマトのソースを絡めたチキンティンガの上に、スライスオニオンとトマト、パクチー、自家製カッテージチーズが乗っています。中央のガラスの器には「柚子サルサ」が。
北出さん:「『日替わりタコスプレート』は、女性のお客さんからのオーダーも多いです。単品タコスの1.5倍の大きさのトルティーヤを使っているのですが、みなさんぺろりと完食しますね。馬喰町はビジネス街でもあるので、平日ランチタイムのお客さんは会社員の方がほとんどです」
付け合わせは、ポテトサラダとキャロットラペ、グリーンサラダ。野菜をたっぷり食べられるのも、人気の理由のひとつかも。
「北出食堂」のタコスに欠かせない3種類のサルサ
「北出食堂」で、すべてのタコスといっしょに提供しているサルサ(ソース)は3種類。果肉と果汁、皮まで柚子をまるごと使った「柚子サルサ」に加え、燻製ハラペーニョを使った「チポトレサルサ」と、ハバネロを使った「ハバネロサルサ」です。
北出さん:「『柚子サルサ』は口直しにもちょうどいいんです。ピクルス感覚でつまんでみてください。『ハバネロサルサ』はかなり辛いです。サルサにうるさいメキシコ人の料理人も『本場でも通用する辛さだよ。辛さの中に旨味がある』と絶賛してくれました。僕自身は、辛すぎて旨味はよく分からないんですが(笑)」
わたしも辛いものは少し苦手なので、「チポトレサルサ」をかけてみることに。チキンティンガの旨味に、スモーキーで爽やかな辛味がマッチ! トマトの酸味やパクチーの香りなど、さまざまな風味の具材が、コーントルティーヤに包まれることで一体となっています。
ふたつめのタコスにはライムも絞ってみます。酸味と辛味のハーモニーが最高! ひと口ごとに新たな発見があり、楽しく食べ進めていたらあっという間に完食。
土日祝日ランチタイムには、ディナーメニューも頼める
シメサバタコスのアイデアは、南米の郷土料理から
ディナータイムと土日祝日のランチタイムに注文できる16種類の単品タコスからは、「シメサバ(400円)」と「八幡平マッシュルームソテー(400円)」をピックアップ。シメサバとコーントルティーヤって本当に合うの? と、未知の味覚にワクワクします。
北出さん:「コーントルティーヤに合う日本ならではの食材を考えていたとき、ぽんっと浮かんだのがシメサバ。南米の郷土料理に『セビーチェ』という魚介のマリネがあるのですが、シメサバとセビーチェは似ているな、と思って」
メキシカンタコスの味の決め手になるのは酸味と辛味。北出さんは、シメサバの酸味に「わさびサルサ」の辛味を合わせることを思いつきました。
北出さん:「わさびはそれこそ、日本の伝統的サルサですよね。わさびとパクチーを和えた『わさびサルサ』は、シメサバタコスのためだけにつくったサルサです」
もともとシメサバが大好きなわたし。口いっぱいに頬張ると、コーンの甘い香りのあとに、ツンとわさびの香りが鼻に抜けました。コーントルティーヤとシメサバの組み合わせの違和感のなさにびっくり。パクチーの風味もちょうどいいアクセントに。
いろいろな味を楽しみながら、シメサバ自体のおいしさもしっかり味わえる。シメサバ好きの方にこそ、ぜひ食べてみてほしいタコスです。
噛めば噛むほどに旨味を感じる肉厚なマッシュルーム
続いて、マッシュルームソテーのタコスをぱくり。岩手県八幡平の地熱を活用して栽培したというマッシュルームは、ぽってり肉厚で弾力があります。
噛めば噛むほどじゅわっと広がる旨味を、柔らかく包み込むコーントルティーヤ。チキンやシメサバのタコスと比べると淡白ですが、そこがいい。大自然の滋味がしみじみ感じられるタコスでした。
3種類のタコスを食べ比べたことで、北出さんの言う「タコスの懐の深さ」が何となく理解できたような気がします。コーントルティーヤに合わない具材って、もしかして無いのでは……?
タコスを、日本の食卓にあたりまえに登場する存在にしていきたい
北出さんには、数年間をかけて取り組んでいるプロジェクトがあります。それは、北海道産トウモロコシを使った「国産コーントルティーヤ」工場の設立。日本橋に物件を確保し、準備を進めている最中なのだとか。
北出さん:「『北出食堂』で使う分を生産しつつ、近所の方が気軽にトルティーヤを買える直売所も併設したいんです。もちろん、メキシコ料理店などの飲食店への卸売りも視野に入れています」
タコスを、家庭の食卓にあたりまえに登場する存在にしていきたいと語る北出さん。「以前、ロサンゼルスに訪れたとき、ピザ屋さんよりタコス屋さんが多かったんですよ」と教えてくれました。日本でも、タコスがピザよりも人気になる日もそう遠くないかも、と思わせてくれるお話です。
北出さん:「日本でもブームになったベトナムのサンドイッチ『バインミー』にフレンチバゲットが使われている理由は、ベトナムがフランス領だった過去があるから。異なる地域の食文化が融合することで、バインミーのような新たな食文化が生まれ、世界各国に広がっていきます。ここ数年で、僕と同じようにメキシカンタコスを日本流にアレンジしたタコスを出すお店も増えてきました。同じ志を持った仲間たちと協力しながら、『日本のタコス』という新たな食文化を盛り上げていきたいですね」
コーントルティーヤ工場のオープンは2020年の4月頃を予定しているのだそう。その頃までに、日本におけるタコスの立ち位置がどのように変化しているか、とても楽しみです。
多国籍な熱気にあふれる「街の食堂」で、暑い夏を乗り切るパワーをチャージ!
「北出食堂」には、近隣のホステルに宿泊している外国人観光客の方も多く訪れます。ご近所にお住まいの家族連れのお客さんと、多種多様な国から訪れた人々が肩を並べ、ブルックリンスタイルのインダストリアルなテーブルで食べるのは、日本の食材を取り入れた、「北出食堂」ならではのメキシカンタコス。
多国籍な熱気にあふれる「街の食堂」のタコスで、暑い夏を乗り切るパワーをチャージしませんか? ランチタイムはもちろん、メキシコビールやモヒート、ビオワインなど、料理に合わせて多彩なドリンクを楽しめるディナータイムもおすすめですよ。
北出食堂(キタデショクドウ)
東京都千代田区岩本町1-13-5 8BLD 1F
TEL:03-6240-9920
営業時間:
平日 11:30-15:00/17:30-23:00
土 11:30-23:00
日祝 11:30-22:00
定休日:第1・第3月
https://www.kitadeshokudo.com/
取材・執筆:菊地 飛鳥
※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。
※金額など掲載されている情報は記事公開時点のものです。変更されている場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。
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