隅田公園 牛嶋神社「すみだ川ものコト市」2018レポート ― 130店舗があつまる「ものづくり」マーケット | 女性の一人暮らし・賃貸物件なら【Woman.CHINTAI】    
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楽しさをわかちあうクラフトマーケット ― 130店舗が集結「すみだ川ものコト市」2018レポート

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「すみだ川ものコト市」は、浅草の対岸に位置する向島エリアにある牛嶋神社と、隅田公園の敷地内で開催されているクラフトマーケット。
江戸時代より職人の街として栄えてきた墨田区には、現在でも、伝統技術を受け継いだ職人さんが多く住んでいます。
ものづくりの歴史が根付いた街の一角で、墨田区をはじめ、全国各地から選ばれたクラフト作家さんたちと出会える年に一度のお祭り。2011年からはじまったものコト市は2018年で13回目です。

とうきょうスカイツリー駅近くの「隅田公園」に、130店舗が集結

とうきょうスカイツリー駅から、隅田川方面に向かって歩くこと数分。緑の木々に囲まれた隅田公園が見えてくると、ものコト市の垂れ幕を見つけました。実行委員や有志のサポーターの方々による手づくりのガーランドが、灰色の曇り空を彩っています。

すみだ川ものコト市

ガーランド
出店者の方々が持ち寄った端切れで作ったガーランドは、ものコト市の目印にもなっている

お昼前に到着した会場は、すでにたくさんのお客さんで大にぎわい。小さな子供連れの親子をはじめ、若者から年配の方、外国人の観光客や、晴れ着姿の花嫁花婿さんまで見かけました。

すみだ川ものコト市

牛嶋神社の境内にものコト市実行委員会の本部があるので、地図をもらって場所を確認します。全部で約130店舗の出店者が参加するものコト市では、手づくり品の販売と、飲食ブース、ワークショップ開催ゾーンなどのスペースが、それぞれのエリアごとに配置されています。神社の神楽殿は、この日限りのライブステージになっていて、様々なジャンルの音楽ライブが催されていました。

能楽殿

会場マップ

あたりを見回してみると、お店のブースでは、お客さんと作り手の方達の会話が弾んでいる様子。

すみだ川ものコト市

すれ違う人の手には、美味しそうなお菓子やビール。
物欲も食欲も刺激される雰囲気にいてもたってもいられず、まずは手づくり品を販売しているエリアをのぞきにいきます。

手づくり品が集まるエリアで、お気に入りさがし

こぎん刺し雑貨

はじめに足を止めたのは、青森・津軽地方の伝統的な刺し子技法“こぎん刺し”を使った雑貨を作っている「oriiro」さん。カラフルな色合いで、幾何学模様のパターンが縫われたアクセサリーを見ていると、店主の方が、これまで知らなかったこぎん刺しの魅力について教えてくれました。

oriiro店主:「こぎん刺しは、補強性と保温性に優れているんです。江戸時代に、倹約令で麻の服しか着られなかった農民の方達が、麻布に木綿の糸を縫うことで暖をとっていたようです。昔の着物を見てみると、びっしりと刺繍が施してありました」

興味深くお話を聞いていると、実際に麻布に糸を通す様子も見せてくれました

続いて立ち寄ったのは、割烹着や前掛け、半纏など、働く衣服をデザインする「塩澤商店」さん。一見、割烹着には見えないカジュアルなデザインに惹かれて、作り手の塩澤政明さんにお話しを伺いました。

塩澤商店

塩澤さん:「数年前、アサクサ・コレクションというファッションショーで、割烹着のコレクションを発表しました。それをきっかけに、働く服のデザインをライフワークにしています。着方も自由で、後ろ前に着ても良いし、ワンピースのように着たり、着物の上からかぶったりしても良いんですよ」

実は、これまでメイド服のデザインを手がけてきたという塩澤さん。お母さんの着る真っ白な割烹着、というイメージを払拭するような新しいファッションの提案は、目からウロコのアイディアでした。

割烹着のモデルをしてくださった塩澤さんのご友人。後ろ前に割烹着を着こなすお洒落っぷりを披露

隅田公園に向かって歩いて行くと、ゆるっとしたデザインの消しゴムハンコを並べた「さくはんじょ」の看板が。ビールとソーセージ、ことこと音を立てる熱燗とお猪口、ぐつぐつ煮えるすき焼きなど……どこか心をほぐしてくれるようなモチーフは、作家のあまのさくやさんが好きなものばかりだそう。インコの顔を掘った絵ハンコに一目惚れしたお客さんが、「この子にメロメロになっちゃった!持って帰りたいけど、どうしよう」なんて悩んでいる姿にも和みます。

さくはんじょ

さくはんじょ

自宅でもつくりたくなる。素材もたくさん集まります

さらに、ものコト市では、ものづくりが好きな人に向けて、素材の販売も行なっていました。今回は、染色糸を扱うお店と、革製品の素材を取り扱う2店舗が出店。

染処風来坊

丸ヨ片野製鞄所

「丸ヨ片野製鞄所」の店番を担当するのは、錦糸町の専門学校にある、伝統工芸・ものづくりコースの卒業生と在校生のふたり。在学中に、革製品の実習で、墨田区にある丸ヨ片野製鞄所にお世話になったとのこと。実習を通して、革職人を目指すことに決めたと話す学生さんの話を聞いていると、なんだかわたしも手を動かしたくなってきました。

ものコト市名物、ワークショップで手づくり体験!

この日参加したのは、和綴じ御朱印帳作りのワークショップ。吾妻橋の近くで中国茶専門店を営む「青玄茶荘」では、掛け軸の額装を行う工房が併設されています。長年、表装の仕事に携わってきた店主のお母様である天草椿さんの指導のもと、和綴じの基本である四つ目綴じに挑戦。針に糸を通す作業ですらおぼつかないわたしに、手取り足取り、ていねいに教えてくれる椿さん。

青玄茶荘
左が天草椿さん。ワークショップの助手をつとめるのは、椿さんの娘さんです

まずは着物の端切れで作られた表紙を選び、好きな色の綴じ糸を選んだら、表紙と中に挟む紙束に穴を開け、糸を通していきます。

和綴じ御朱印帳作り

少しでも気をぬくと、糸が弛んだり、穴に針をとおす順番を間違えたりしてしまうので、作業に集中。30分足らずで無事完成しました。牛嶋神社にさっそく御朱印を頂きにいくと、一気に愛着も湧いてくるようです。

和綴じ御朱印帳

牛嶋神社

隅田川沿いのお店が集まる飲食店エリアへ

気付けば、あっという間に13時を回っていました。手も足も動かして、お腹がすいてきたので、飲食店の集まるエリアに移動します。ものコト市に参加している飲食店は、すべて隅田川両岸に実店舗を構えているお店だそう。人気の菓子店や老舗喫茶店のフードは、早くも売り切れでした。

すみだ川ものコト市のフードゾーン

わたしがいただいたのは、押上にある古民家カフェ「フジサン・デリ」の富士山はんぺん。静岡のご当地グルメを味わえる実店舗では、ほかにも富士岡焼きそばに、浜松餃子、静岡おでんなども味わえるとのこと。
富士山の形をしたはんぺんは、手のひらほどの大きさがあってボリュームもたっぷり。

富士山はんぺん

続いて、見慣れない“げそ天”という言葉が気になって注文したのが、昭和6年創業の鐘ヶ淵にある酒場「はりや」の名物。天ぷらかと思いきや、細かく切ったいかゲソが入ったお好み焼きのような食べ物です。

げそ天

合わせてこちらもいかがですか?とすすめられたのは、豆乳で作ったマヨネーズのポテトサラダ。
これには、どうしてもビールが欲しくなる。ということで、墨田区で生まれたクラフトビールを提供している「ヴィルゴビール」の北斎白麦酒を頼めば、プチ宴会セットの出来上がり。

ビール

口の中で弾けるようなプリプリのいかゲソと、卵を使わないさっぱりとしたポテトサラダ。スカイツリーを眺めながら、口当たりの良いビールで喉を潤すひとときに浸ります。

お客さんも出店者さんも、ものとコトの楽しさをわかちあう

東京スカイツリー

ものコト市実行委員会代表の三田大介さんに、ものコト市のはじまった経緯についてお伺いしました。

三田さん:「もともとは、自分の周りに河川敷でマーケットを開きたいとか、居酒屋さんをやっている人が、近所で手づくり市をやりたいといった声がいくつか集まったのがきっかけでした。この市がはじまった2011年は、東京スカイツリーの建設真っ只中で、なんとなく、周辺の住民たちがソワソワしていた頃です。あの時は『自分たちがこの街で何かできる』という、不思議な自信があった気がします。みんながつながろうとしはじめたのを契機に、4月の開催を目標に少しずつ準備を進めました」

しかし、2011年の3月には東日本大震災が発生。開催を迷ったこともあったようです。

三田さん:「震災直後で、誰もが控えめになっていた時期でしたが、イベントをすることで元気づけられるかなと思い、予定通り実施しました」

はじめは年に2回の開催で、現在は年に1回のペースで例年秋に開催されているものコト市。回を重ねていくことで、出店者からのうれしい声を聞く機会が増えてきたのだそう。

三田さん:「作家さんから、『良いお客さんが多いね』と言ってもらえることが増えました。単に値踏みをするのではなく、物の価値を認めてくださったり、興味を持って作品を見てくださったり、出店していて気持ちが良いそうです。ものコト市では、出展者とお客さんの橋渡し、出展者同士の橋渡し、地域と作り手との橋渡しを通して、ものとコトの楽しさをみんなで分かち合うことを目指しているので、それが実現できているのかなと感じます」

たしかに、お店を見て回っていると、あちこちで作り手の方が楽しそうにお話ししている姿を見かけました。お客さんの中には、前回のものコト市で購入した商品を身につけてきた地元のリピーターの方も。

秋津屋
張り子の技法を使ってお面を制作している「秋津屋」の店主(左)と、秋津屋の仮面に惚れ込んで店番を務める常連さん(右)

人のつながりのある街だからできること

実行委員のメンバーを務めながら、ご自身も作家として参加している「つぐみ製陶所」の堀越さんは、墨田区が人のつながりがある場所だと話してくれました。

つぐみ製陶所

堀越さん:「墨田区は、業種をまたいだ横のつながりが多い街。ものコト市の出店者とも顔見知りなので、年に一度の同窓会みたいな雰囲気です。リピーターのお客さんから手作りのクッキーをいただいたり、近所の美容師の方が、仕事前に差し入れを届けに来てくれたりもしました」

ものづくりの会社や職人さんなど、自営業者の多い街だからこそ、職種に縛られないつながりが、自然と出来上がっていくのかもしれません。

三田さん:「墨田区や台東区、足立区は革製品の工房が特に多く、隅田川を渡った対岸には、問屋もたくさんあります。なので、出店者にも革製品やガラスを扱う会社や作家など、地場産業の影響が出ています。ものコト市を開催することで、はじめて墨田区に『こういう作家さんやお店があるんだ』と知ってもらう機会が生まれることも。単発のイベントだけで終わらせず、日常にも波及できたら良いなと思います」

人と人だけでなく、街と人がつながる機会も与えてくれた「すみだ川ものコト市」。神社の境内では、あたたかな出会いの一場面を、撫で牛がそっと見守ってくれているような気がしました。

牛嶋神社

東京スカイツリー

すみだ川ものコト市

会場:牛嶋神社(東京都墨田区向島1丁目4-5)
アクセス:都営浅草線「本所吾妻橋駅」徒歩3分
東武伊勢崎線「とうきょうスカイツリー駅」徒歩3分
東京メトロ「浅草駅」徒歩10分
http://sumida-monokoto.info/
※開催日は公式サイトからご確認ください。

取材・執筆:田中 未来

※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。

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