素敵な服を買うように、街のフリーマガジンをつくる(前編) ― 「もとすみマニアックず。」山川みずき 【Woman.CHINTAI】
 
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素敵な服を買うように、街のフリーマガジンをつくる(前編) ― 「もとすみマニアックず。」山川みずき

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渋谷駅から東急東横線に乗り換えて約25分。元住吉駅は、神奈川県川崎市に位置します。同じ沿線の中目黒や自由が丘のような華やかさはありませんが、駅周辺には活気のある3つの商店街が広がり、平日の昼間からたくさんの人々が行き交います。

待ち合わせ場所に指定されたのは、東口から伸びるオズ通り沿いのカフェ「オレンジブルー」。ウッドデッキが印象的な店内のそこかしこにサッカーグッズが飾られています。川崎フロンターレの熱心なファンだという店長におすすめのドリンクを伺っていると、「こんにちは!」という元気な声と共にお店の扉が開きました。

現れたのは、元住吉を題材にしたフリーマガジン「もとすみマニアックず。」編集長の山川みずきさん。今回は、彼女のお話が聞きたくて元住吉までやってきました。

終電を気にせず飲める……もしかして「地元」って楽しい?

山川さんが、元住吉で育った友人たちと手掛ける「もとすみマニアックず。」の最大の特徴は、1号で1店舗しか取り上げないこと。元住吉の個人店と、そのお店を経営する「人」を独自の視点で掘り下げたフリーマガジンは号を重ねるごとに発行部数を伸ばし、現在は、フリーペーパー専門店「Only Free Paper」や渋谷HMVでも手に取ることができます。

山川さん:「創刊のきっかけは、大学4年の夏に同い年の友人たちと久しぶりに集まって飲んだこと。もともと私は、中学生の頃からファッション誌やカルチャー誌が大好きで、将来は雑誌の編集者になりたいという夢を抱いていました。そんな話を友人たちにすると、じゃあ私たちで何かつくろうよ! と盛り上がってしまって。みんな就職活動中だったので、志望企業にアピールできるような自分たちの作品がほしい、なんて目論見もありました(笑)」

元住吉をテーマに据えたのは、やはり元住吉が好きだから? そう尋ねると、彼女は少し考え込みます。

山川さん:「うーん……。私が元住吉で暮らすようになったのは11歳の頃で、その前は父の仕事の関係でメキシコやコロンビアに住んでいました。当時は住んでいた街の治安が悪くて、1人で出歩くことなんて絶対できなかったんですね。だから、私にとって元住吉は『はじめて自由に散歩できた街』なんです。そういう思い入れはあります」

地図を片手に、元住吉のあちこちを自転車で走り回っていた山川さん。しかし年頃になると、遊ぶ場所は話題性の高い渋谷、中目黒などに変わっていきます。

山川さん:「若者はみんな華やかな場所に行きたがりますよね。特にこの界隈は、渋谷や中目黒が近いのも大きいかも。休日になると、元住吉から出て遊んでいるという友人がほとんどでした。でもあるとき、元住吉の居酒屋で思ったんです。終電を気にせず飲んで、飲み足りなかったらお店をはしごして、酔っ払って歩いて帰る。これって渋谷や中目黒じゃできないなぁって」

繁華街の人気のお店は知っているけど、地元のお店のことを何も知らないのはダサいのでは。そう考えるようになったと言います。

山川さん:「大学で都市論を学んでいたのも大きいと思います。改めて、自分の住む街の現状に目を向けてみると、商店街にチェーン店が増え、お店の入れ替わりも激しくて。大好きだった雑貨屋さんが、しばらくしたらコンビニに変わっちゃったり。開店直後は賑わっているけど、そのうち飽きて誰も行かなくなってしまう。それがなんだか寂しかったんですよね。よく知っている街の個性が、どんどん薄れていくみたいで」

街の個性は、個人店でしか形成できない――
そう強く感じた山川さんたちは、元住吉の「個人店」にテーマを絞って取材することを決意しました。

ワクワクしながら、私たちなりの自己表現を続けたい

現在、山川さんは、渋谷ヒカリエ8階の「d47」で働いています。

山川さん:「働きながらの活動は大変じゃない? とも言われるんですが……でも、『もとすみマニアックず。』をつくるのは私の趣味なんですよ」

広告は一切掲載せず、印刷費などの発行にかかる経費は全額、3人の編集メンバーで折半しているのだそう。

山川さん:「毎回、何万円も出してフリーマガジンをつくっていると言うと驚かれますね(笑)。でも、例えば服が好きな人だったら、シーズンごとにお気に入りのちょっといい服を買ったりするじゃないですか。趣味に投資する感覚で、ものづくりという行為にお金をかけてもいいと思うんです。今後、メンバーそれぞれの活動の幅が広がるきっかけになればいいなという想いはありますが、今のところ、自己表現は私たちの『趣味』。素敵な服を手に入れるようなワクワクした気持ちで、これからも続けていきたいと思っています」

取材中、資料として山川さんが持ってきてくれた創刊第一号を手にとってみます。この号で取り上げたのは、高校の先輩が開業したバインミー専門店『ベトナムサンドウィッチThao’s』。表紙をめくると、そこには、山川さんたちが発信する「地元の個人店に目を向ける面白さ」が綴られていました。


好きな店、
好きな店主。
あの人の記憶の断片に
一回とはいわず
地道に 丁寧に
何回だって触れてみる。
それはとても楽しいことで
あたたかいこと。

居酒屋の雑談から生まれた、手のひらサイズのかわいらしいフリーマガジンは、ずっと住んでいる地元の街のような、身近にある当たり前のものの大切さを教えてくれます。

後編では、専門知識のない大学生がはじめてフリーマガジンを発行するにあたってのエピソードなどを紹介。『もとすみマニアックず。』を通して、山川さんたちと元住吉、そして、元住吉に住む人々との関係も変わっていきます。

素敵な服を買うように、街のフリーマガジンをつくる(後編) ― 「もとすみマニアックず。」山川みずき

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取材:佐藤 有香 写真:土田 凌 編集:菊地飛鳥 企画構成:haletto編集部

※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。

※金額など掲載されている情報は記事公開時点のものです。変更されている場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。

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