アタシが選ぶ本と週末(12)「100年後あなたもわたしもいない日に」 文:土門 蘭 絵:寺田マユミ 【Woman.CHINTAI】
 
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アタシが選ぶ本と週末(12)「100年後あなたもわたしもいない日に」 文:土門 蘭 絵:寺田マユミ

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「すごいなぁ」思わず感嘆の声をあげた。京都の出版レーベル・文鳥社がつくった『100年後 あなたも わたしも いない日に』を手に、夕日を見上げる。土門さんの短歌と、寺田マユミさんの絵が軽妙に絡み合った奇跡のような1冊。

寺田さんが「トリミングっておもしろい」と言ったことから着想した本らしく、本そのものの中にもトリミングを使った面白い仕掛けがあちこちに。土門さんの短歌も「生活のシーンをトリミング」しているとまえがきに書かれている。

ものを選ぶという行為も。

言葉を選ぶという行為も。

どこかへ出かけるという行為も。

思えば全て「トリミング」なのかもしれない。自分にとって不要な部分を切り捨て、美しいと思うものを選び、強調する。無数の選択肢の中から、選ぶ。その選び方に、人間が現れる。土門さんは“たたずまい”のいい人なんだろうなぁと想像する。

「言葉」は昆虫採集のようだと思う。「美しいなぁ」とか「うひょっ、気持ち悪いなぁ」とか言いながら、1つ1つ言葉を採集する。大事な人に、とっておきの標本を見せるように、言葉を選べたらいいのだけど。言葉は簡単に人を傷つける。誰かを救ったり、助けたりする「言葉」を選ぶのは難しい。そもそも標本が貧相だと、選択肢も少ない。

土門さんは、あるインタビューでこんなエピソードを語っている。

就活の面接で「無人島になにをもっていきますか?」と問われ「辞書です」と答えた。理由は「それだけ言葉があれば、そこに無人島で暮らす自分の感情を表す言葉が、どこかに載っているかもしれないので」。その面接には落ちたという。私は、素敵な答えだなぁと思う。無人島で誰かと言葉を交わす必要がなかったとしても、人は「言葉」を必要とする。他者に「言葉」を語りながら、自分に「言葉」を聞かせているようなところが、人にはあるから。

(記事元:好きなことを仕事にできなかったわたしが、 好きな人と働いて見つけた自分の仕事」|りっすん

すべてが素晴らしかったけれけど、いくつか選ぶならこの3本の短歌が好きだ。

誰も 彼も この世に遊びに来た子供 時折ふっと 帰りたくなる

お父さんから 旦那さんへと飛び移る あのときわたしは 宝石として

この日々に ライナーノーツを書いてほしい 平凡なアルペジオの集積

最も心を揺さぶられたのは、本のタイトルにもなっている短歌。

100年後 あなたも わたしもいない日に 今日とおんなじ 朝陽がのぼる

私は今、消滅可能性都市『三浦市』で出版社を営んでいる。20年後、なくなっているかもしれないと言われるこの町で。

先日、この町の祭りを見た。それはそれは、美しい祭り。20年後も見られるといいなぁ。でも、100年後はどうだろう。私もあなたも、この町も。もう、なくなっているかもしれないね。きっと、太陽や海は変わらないままで。

文と写真:三根かよこ

今回で三崎の夫婦出版社「アタシ社」の連載はおしまい。
旅や散歩のお供にぴったりな本を紹介してまいりました。

有限の人生の中で何冊の本に出会えるでしょうか。
同じように暮らす場所も、出かける場所も、人生で何回選択できるでしょうか。
自分が出会うものはすべて「偶然」ではあるけれど。
「いい偶然」に出会うために、たくさん本を読んで、がむしゃらに「外」へ出かけること。
その行為は、きっとあなたの人生を助けてくれると思います。

偶然にもこの連載にたどり着いた人の幸せを願って、ペンを置きます。

三崎の夫婦出版社「アタシ社」ミネシンゴ、三根かよこ

100年後あなたもわたしもいない日に

文:土門 蘭
絵:寺田マユミ
出版:京都文鳥社
https://amzn.to/2vnHMyV

「アタシが選ぶ本と週末」はじめから読む

※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。

※金額など掲載されている情報は記事公開時点のものです。変更されている場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。

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