【scene 01 田端、出発の汽笛が鳴る ― まわる東京、緑色の電車に乗って】 【Woman.CHINTAI】
 
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【scene 01 田端、出発の汽笛が鳴る ― まわる東京、緑色の電車に乗って】

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池袋駅から外回りで4駅目。田端駅。実は「鉄分補給」できる知る人ぞ知る聖地なんです。

田端アイキャッチ

ここで言う「鉄分」とは鉄道要素のこと。鉄道ファンの方がお目当ての鉄道に乗ったり、撮影したり、お気に入りの鉄道スポットに足を運ぶことを「鉄分補給」と言うのだそう。

最近、かつて地元を走っていた思い出の電車の模型を購入してしまった私。これを機に鉄道入門するのもいいかもと考えつつ、降り立ったのは田端駅の北口。まずは、駅から出てすぐ右手にある「ふれあい橋」を歩きます。

田端ふれあい橋

オブジェや時計塔などが設置された橋は広々としてのんびりした雰囲気。植栽の淵がベンチになっていて、スーツ姿のサラリーマンもひと休みしています。しばらく歩いていると、ベンチの後ろに不思議な球体を発見。

「東北新幹線200系で使用されていた連結器カバー」との説明書きがあります。連結器カバーってなんだろう。さっそく疑問が湧きますが、「新幹線の鼻部分」という追記を読んで、「なるほど!」と納得。白にさわやかな緑、青のカラーリングの新幹線は、子どもの頃に見た記憶があります。

そのすぐ先には、車輪も展示されていました。こちらも、2013年に廃車となった東北新幹線200系で使用されていたもの。

ふれあい橋の上の高架には新幹線が走り、橋から下を見下ろすと、山手線や京浜東北線の線路が。部屋から線路を一望できるとして、鉄道ファンにも人気らしいビジネスホテルも見えてきました。

ふれあい橋を挟んで、ビジネスホテルとほぼ向かい合う位置にある建物は、JR東日本の東京支社ビル。これがあることも、田端が「鉄道ファンの聖地」と呼ばれている理由のひとつなのかもしれません。

ふれあい橋を引き返し、一度、スタート地点の田端駅北口に戻ります。そこから今度は左手へ。JR東日本東京支社ビルがある側へと信号を渡り、「山手線で唯一」というある場所へ向かいます。

坂道を上り、商店街を抜け、眼下に線路を見下ろしながら歩くこと15分。「カンカンカンカン」というどこか懐かしい音が耳に届きました。目の前で、黒と黄色の遮断機が下りていきます。その踏切の名は「第二中里踏切」。山手線で唯一、現役で稼働している踏切です。

朝のラッシュ時には、2分半に1本のペースで運行している山手線。踏切はほぼ閉じっぱなしになってしまって機能せず、次々に廃止されていく中、道路の地下道化も高架化も難しいこの場所だけは、踏切が現在も残されています。

気がつけば、昼の14時過ぎ。ラッシュ時に比べればのんびりした時間帯ですが、それでもさすがは山手線。ひっきりなしに警報機が鳴り、おなじみの緑の車両が行き交います。遮断機が上がるほんのわずかの時間に、線路の向こう側へと渡る自転車やトラック。ちょっと忙しなくても、住民の方々の生活に溶け込んだ、欠かすことのできない踏切なのだと感じました。

カンカンカンと鳴り響く音を背に、田端駅北口へと戻ります。次の「鉄分補給」スポットを目指して、再びふれあい橋へ。橋を渡りきったところから階段を下ろうとすると、手すりに山手線の駅名が順番に刻まれていることに気づきました。

田端からはじまり、外回りで西日暮里、日暮里……。階段の踊り場に並ぶのは、新橋、浜松町といった日本有数のビジネス街のある駅です。

階段を下りきるところには、2度目の登場となる田端のプレートが。階段を下りただけなのに、なんだか山手線を一周した気分です。

次の目的地は、小学校に隣接するごくごく普通の児童公園。敷地の形状から、通称・三角公園とも呼ばれているらしい東田端公園には、「与美夕照(よみせきしょう)」と名づけられた鉄道モニュメントが展示されています。

東田端公園のすぐ目の前にある与美西踏切には、かつて夕方になると、この近くの尾久車両センターから上野駅に向かう寝台特急「北斗星」が通過していました。北斗星は2015年に廃車になってしまいましたが、この情景をイメージし、「東田端鉄道八景」のひとつとして設置されたのが与美夕照。車輪は、京浜東北線や東北本線を走っていた旧車両のもので、「夕照」は夕焼けを意味しています。

奇しくも、時刻は夕暮れどき。オレンジ色の光の中、北斗星の青い車体が踏切を通り抜けていく……ほんの少し前まで、確かに街の日常の一部だった風景が脳裏に浮かびました。

与美西踏切から尾久駅方面へ、線路沿いに3分ほど進むと、そこには与美夕照と同様に、東田端鉄道八景として設置された「下田端夜雨(しもたばたやう)」が。モニュメントとしては現在は閉鎖扱いで案内板などはありませんが、雰囲気のある三ツ目の信号機や、レールを活用したベンチなどがあります。

山手線だけでなく、京浜東北線や東北本線、そして東北・上越新幹線。数々の線路が張り巡らされたこの街は、どこを歩いていても、電車の走る音が聞こえてきます。

夕闇迫る中、最後に向かったのは「田端運転所」。JR東日本の車両基地で、同じく車両基地である尾久車両センターに隣接しています。田端運転所に所属しているのは、主に貨物列車を牽引している電気機関車です。

フェンスの向こう側の線路に停車していたのは、レトロなデザインの青と赤の電気機関車。重厚な佇まいから、長い歴史の重みを感じます。

田端運転所の目の前には、「王子街道南亘り踏切」という小さな踏切がありました。田端運転所と尾久車両センター間で電車を移動させるための短い単線が道路を横断している、ちょっと珍しい光景です。先ほどの山手線唯一の踏切とは違い、こちらは滅多に閉まることがない踏切なのだとか。

敷地内に点々と停車している電気機関車を眺めながら、尾久車両センター方面に向かい、ゆっくりと歩いてみました。刻一刻と夕闇に沈んでいく視界の中、穏やかな余生を過ごしているかのような表情を見せる電気機関車たち。

田端駅へと引き返して、本日3度目の通過となるふれあい橋で、最初の鉄分補給スポットだった「新幹線の鼻」こと連結器カバーへの興味が俄然高まっていることに気づきました。

そもそも「連結器」って? どうして「カバー」が必要なの? ……「鉄分」は、補給すればするほど知的好奇心が刺激されるものだったんですね。

次に田端に来るときには、電気機関車のことも少し勉強してこよう。まったく何も知らなかった街に、また訪れたいと思う理由ができました。

取材・執筆:菊地 飛鳥
企画構成:市井 了
編集:haletto編集部

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※この記事は、2019年11月までおでかけメディア「haletto(ハレット)」で掲載されていた内容を、公式に転載したものです。

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