- case
- 2020/04/24
「繋がろうの輪」に包囲されて
「おうち時間」が続く。
一人暮らしで、同じ就業時間を共有する同僚も存在しない私にとっては、とてつもなく寂く、退屈な日々だ。きっと、みんなもそうなんだろう。最近、同じような仕事をしている友人たちから、やたらと「バトン」が回ってくる。
「バトンが回って来た人は、最後に聴いた曲を教えて!そして次の人を指名!」「#自撮りつなぎ。自撮りを投稿して、次の人につないでね!」。
会えない今も繋がろう!みたいな前向きな意図で誰かが始めたことなんだろうけど、あまりにも回ってくるので、ちょっとだけうんざりし始めたところだ。「繋がろうの輪」に包囲されている気分。私が中学生くらいの頃に流行った、チェーンメールや迷惑メールを彷彿させる。
忘れられないチェーン?メール
忘れられない迷惑メールがある。
中3のある日、買ってもらったばかりの携帯電話にメールが届いた。
「君をいつも見てるよ」
彼氏もおらず、当時好きだった先輩のアドレスは聞けず。「明日の時間割なんだっけ」くらいのメールしか届かなかった私のケータイに、突然の熱い「見てるよ」宣言だ。
そのメールの差出人の名前には、心当たりがない。玲雨だかなんだか、そういう、ラノベの主人公みたいな名前だった気がする(ラノベはほとんど読んだことないけど)。正直、どうせ業者がやっている迷惑メールだろう、とは思っていたのだが、興味本位で「どちら様ですか?」と返信してみる。
「いつも近くにいるんだけどな……」
いつも近くにいる人でそんな奇抜な名前の人はいなかったし、私のことをいつも見ていそうな男子も思いつかなかった。やはり迷惑メールだ。
しかしやはりお年頃の中学生女子。翌日、周囲の男子を見る目は完全に「こいついつも私のこと見てるな!?」だった。
部活が一緒のあの子、よく話しかけてくるから私のこと好きそう。隣のクラスのあいつ、休み時間のたびに私に会いにくるから私のこと好きそう。というか全員私のこと好きそう。
日焼け止めもロクに塗らず部活動のテニスに明け暮れていたガングロ少女のくせして、とんだ思い上がりだ。
顔も知らない男子と、続くメール文通
その後も、彼とのメール文通はなぜか続いた。
話をしていると私のことを本当に知っているようで、迷惑メールというよりも知人からのいたずらの線が濃くなっていた、その時だった。
「実は僕、もう死んでいて、天国にいるんだよね」
突然の「見てるよ宣言」の次は、突然の「死んでるよ宣言」だ。勘弁してほしい。
じゃあなんでメールが送れるの、と当然すぎる疑問をぶつけると、曰く「天国にも電波はある」とのことだった。当時Twitterがあったら、そのやりとり、すぐに晒していただろうな。
送り主の正体が判明
部活動の友人たちとマクドナルドでランチをしていたときだ。ちょうど偶然、その男子からメールが届いた。そういえば最近、こんなメールが来るんだよね、と同級生たちに見せると、その中の一人が「このアドレス知ってる!」と騒ぎ出した。同じ学校の1つ下の女の子の、サブアドレスだったようだ。
私を困惑させ、とんだ勘違いをさせ舞い上がらせた相手は、男子ではなく、女子だった。早速友人からその女の子に「今何してる?」と送ると、すぐに返信が来た。
「暇だったので携帯で遊んでました~」
あーちゃん。遊ばれてるよ。
友人たちに指摘され、迷惑メールに踊らされた私の1ヶ月弱が終わった。
バトンはもう誰からのも受け取らないし、誰にも回さない。
けれど、ちょっとノスタルジックな気持ちにもなれたし、楽しくはあったな。
そんなおうち時間です。
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