「マイホーム」から逃げ出したアラサー女が、一人暮らしを始めて気付いたこと【はてなブログキャンペーン 寄稿記事】 【Woman.CHINTAI】

「マイホーム」から逃げ出したアラサー女が、一人暮らしを始めて気付いたこと【はてなブログキャンペーン 寄稿記事】

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一人暮らし2年生になりました

一人暮らしを始めて、1年が過ぎた。

東京23区内・駅チカ・日当たり良好・24時間ゴミ出し可・宅配ボックスつきワンルームの家賃はそこそこのお値段だが、今の部屋によって得られている精神の安寧を考えると、むしろ安く感じてしまう。

どうして28歳になるまで、この快楽を知らなかったんだろう、自分。

都内実家暮らしの特権をフルにしゃぶり尽くしていたからというのが理由なのだが、振り返ってみると、私ができる限り避けて生きていたのは、家賃の支払いでも家事の負担でもなく、家を持つ・借りるという行為そのものだった。

それはなぜか? 

親の離婚を経て、「家」というものと、それに伴う「責任」をひどく重荷に感じていたからだ。

重荷と化した、夢のマイホーム

もともと社宅で4人暮らしをしていた我が家が一戸建ての住宅を購入したのは、私が小学校に入学したとき。窮屈な社宅暮らしから解放され、初めて一人部屋を手にした私は、緑も多い環境の中でのびのびと小学校生活を楽しんでいた。

しかし、中学に上がったあたりから、両親の仲が険悪になり始めた。ほころびは広がるばかりで、母と私と弟は、父を残して夜逃げ同然に家を出ていくことになる。私たちは母方の祖父母の家に居候することになった。

そして、その後の離婚調停で、マイホームとそのローンが財産分与の話し合いにおける妨げになっているのを見て、「家」というものへの苦手意識が決定的なものとなった。容れ物としても、概念としてもだ。

住まないわけにはいかないけれど、自分ではコストもリソースもかけたくない。ずっとあるという保証はなく、不意になくなってしまうこともあるのだから、思い入れを持ちたくない。私にとって、家はモノを置いて寝に帰る場所であれば十分で、一人暮らしをしたいという気持ちも湧きようがなかったのだ。

失敗した一度目の一人暮らしチャレンジ

そんな私にも、一度「一人暮らしをして自分を変えるぞ!」と思い立って、実際に物件を申し込んだことがある。

当時の交際相手にわずか2カ月で振られるという出来事があり、「このままじゃダメだ」というぼんやりとした焦燥感にどうにか打ち勝とうとして見出した選択肢が「一人暮らし」だったのだ。

いや、でもこの答えには自分でたどり着いたんじゃなくて、人に話を聞いてもらいたくて通っていたタロットの占い師さんにアドバイスされた内容だったような……。2015年秋、26歳のことである。

一人暮らしの動機が衝動的かつネガティブな上に、落ち込み過ぎて思考が鈍くなっていたものだから、物件を探すに当たって「こういう部屋に住みたい」「ああいう暮らしがしたい」という前向きな展望はゼロだった。住む部屋の条件も「通勤に便利だけど、できるだけ安いところ」だけを軸にしていた。

結局、最初に足を運んだ不動産屋がグイグイとすすめてきた、私鉄沿線徒歩3分1K6畳のアパートに申し込みをすることになるのだが……契約予定日が近づくごとに、重たい気持ちになってきた。

「よく考えたら、私の蔵書を置くには狭いのでは」
「アパートって、生活音が聞こえやすいんじゃなかったっけ」
「不動産屋さんがやたらとグイグイすすめてきたのは、本当は条件の良くない物件だからなのでは」
「というか、冷静に考えて実家の方が便利では」
「わざわざお金をかけて引っ越すほどの物件だろうか」

と、あとからあとから懸念点が思い付いてしまい、加速度的にモチベーションがしぼんでいったのだ。

「好き! ここしかない!」と決心したわけではなく、「考えたくない……すすめられたものでいいや」という消極的な選択をしたのだから、当然である。「家」に責任を持つことをしたくないという逃げもひそんでいるから、もう八方塞がりだ。グジグジとした気持ちから逃げようと決心したはずの一人暮らしのせいで、かえって負の“グジグジスパイラル”にドハマリする羽目になった。

その上、折悪しく、電車で財布をすられてしまう。

「もうダメだ……。財布に入ってたお金、ちょうど家賃1カ月分くらいの金額なんだよな……。でも引っ越すのを一旦延期したら、この損は、支払わずに済んだ家賃と相殺した気分になれるのでは?」

と謎の帳尻意識を働かせた私は、申し込んでいた物件を勢いでキャンセル。その後も結局、引っ越しを保留にし続け、引き続き炊事も洗濯もろくに自分でしないまま、ぐうたら度を深化させていくのであった。

自分のことが分かったから、一人暮らしに踏み切れた

そんな私が前向きな一人暮らしを実現させることができたのは、「副業を通して、自分に自信がついたから」だと思う。

26歳での一人暮らしチャレンジに敗退した私は、あれから結構反省していた。まだ契約には至っていなかったものの、不動産屋さんや家族を含め、多くの人を巻き込んで迷惑を掛けてしまったからだ。

とはいえ、いつまでも陰鬱でいても仕方ない。「自分が素直に楽しいと思えることをやって、気を紛らわしていこう」と思って頑張ることにしたのが、フリーライターとしての副業と、同世代の女性4人で始めた同人サークル「劇団雌猫」の活動だ。

私は新卒から4年ほどWeb編集者として働いているが、個人としてさまざまな媒体に企画を持ち込んだり、興味のあることを採算度外視で同人誌にしてみたり……といった劇団雌猫の活動には、これまでとは違う刺激があった。

自分が面白いと思ったことが世間にも楽しんでもらえることで、恋愛や一人暮らしの失敗でへしゃげていた自己肯定感も、心なしか上向きになっていった。大学の勉強や会社の仕事をしているときよりもずっと、「自分自身はどうしたいのか?」「これからどんな人間になりたいのか?」といった問いと真剣に向き合い、腹を決められるようになった。

30代を前にしてようやく、自分との付き合い方が分かってきたのだ。

自分の中のグジグジ要素が減ってきたところで、「今なら、一人暮らしに踏み切れるかも」という思いが、本当に素直に湧いてきた。と同時に、ライター業に専念するために、もっと自由に使える自分の空間が欲しいという気持ちも出てきた。

「執筆時間を増やしたいから、通勤時間を徹底的に減らしたい」
「休日に打ち合わせに出るために、便利な場所に住みたい」
「疲れて帰った後ぐっすりと眠れるよう、部屋には大きいベッドを置きたい」
「雑務のコストが減らせるよう、宅配ボックスや24時間捨てられるゴミ捨て場が欲しい」
「レイトショーを観た後でも帰りやすい立地がいい」

……など、部屋に求める具体的な条件がどんどん思い浮かぶようになった。26歳のときとはえらい違いである。

20件以上の物件をピックアップしてから不動産会社に問い合わせ、物件を内見して「なんかテンション上がらないな……」と思ったら決断をせず、「これだ!」と思える物件を探し続けた。そして出会ったのが、今住んでいる物件だ。

探し出してしばらくは、納得のいく物件を見つけることはできなかった。しかし「すごく気に入ってるんだけど、1階は不安だな……」という物件の管理会社にダメ元で問い合わせてみたところ、上階の部屋が実はもうすぐ空くという情報を教えてもらったため、すぐさま申し込んだ。

その後、前の住人が退去したのと同時に契約を果たし、ようやく私の一人暮らしチャレンジはフィナーレを迎えたのであった。

自立は、ドラマティックなものとは限らない

一人暮らしをしてみるまで、「家」を選び、お金を払い、維持・運営するということは、極力避けておきたい「責任」かつ「重荷」だと感じていた。

それは実際に責任であり重荷でもあるのだけれど、やってみるととても刺激的なことだった。自分の選択やその結果を楽しめるようになったのは、お金や時間に余裕ができたこのタイミングで一人暮らしに踏み切ったことへの最大の収穫だ。そして、これこそが「私の自立」だったのだと思う。

環境を変えることや何かを決断することが、全て自立につながるわけではない。私の場合も、一人暮らしそのものというよりは、実家暮らしの中で目の前にあるやりたいことに集中し、自分のグジグジ癖を改善したことこそが自立だったと捉えられるからだ。

何が自立なのかは人によって違うだろうし、実家に住み続けていても自分らしく生きられる人もいるだろう。ただ、食わず嫌いしていたものほど、思いがけない楽しさを秘めている可能性もあるとは断言できる。それに、何度失敗したとしても、次はうまくいくこともあるのだ。経験則や過去の記憶に縛られることほど、もったいないことはない。

今年夏に思い切って行ってみたナイトプールから見えた景色

一人暮らしを始めてからは、家族4人で住んでいたあのマイホームのことも好意的に思い出せるようになっていた。部屋の間取りを考えたり、建築の過程を見に行ったりしていたときの私たちは、確かに楽しんでいたと思えてきたからだ。

先が分からないからこそ、今が楽しい


引っ越して1年たったところで、あるものを買った。ファブリックパネルだ。

北欧柄の布地をパネルに張って飾り付ける、ウォールアートの一種である。この部屋で暮らしていくに当たって、もっと積極的にインテリアにこだわってみたいと思い始めたのである。

「点と線模様製作所」という日本のブランドがデザインしているファブリックを使ったもので、セミオーダーである。内側に釘をトンカンと打って、これから壁にかけるところだ。

お値段、1万4,000円也。真面目に凝りだすと、おそろしい浪費になるな……とびくびくしつつ、それを期待している自分もいる。

今住んでいる部屋の契約期間は、あと1年。

果たしてこの部屋を更新することになるのか、全然違う部屋に引っ越すことになるのか、急に気が変わって実家に戻ることになるのか、先のことはまったく分からない。

けれど、分からないからこそ、今この瞬間をめいっぱい楽しめるのだと思う。

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著者:ひらりさ
平成元年生まれ。酒とBLを主食とする腐女子にして、同人サークル「劇団雌猫」メンバー。
ブログ:It all depends on the liver.
Twitter:https://twitter.com/sarirahira

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